生地 雅之

2022 23 May

イオンスタイル新百合ヶ丘店・レンタルストアLULUTI

最近発表されたイオンのレンタルストア「LULUTI」ですが、果たしてビジネスに繋がる事業なのでしょうか?数回前のこのブログに「それは本当にやって見ないと判らない戦術なのか?」と記載したものと同様に映るのですが、果たして?

https://blog.apparel-web.com/theme/consultant/author/ochi/dc3f0a5a-0c2e-4506-b0e1-321adba84936

 

この店は最近の衣料品の低迷とシェアハウスやシェアオフィスの広がりを見て融合させたビジネスなのでしょうが、イオンのターゲットにはずれがあるものと思われます。確かに百貨店層においてのお客様の裾野広がりを求めるには適したものなのですが、GMSではいかがなものかと。本日(5月23日)付日経MJにはイオンのこのLULUTIの記事が掲載され、良い事ずくめで「若者のシェアリングサービスの需要を取り込み、将来の顧客の獲得につなげたい」とありますが、果たして?

 

百貨店層の裾野部分のお客様は百貨店でモノが買える事にもステータス性を感じ、自分がその中に入りたい「憧れ」も感じられている人も存在しているのです。それを拾い上げる手法としては、百貨店層における子供服やフォーマルウェア等のレンタルは上手にやれば十分ビジネスになりえると思われるのですが、百貨店が手を出す前にGMSが手を出しているのです。この腰の軽さは百貨店にはないのですが?百貨店しか、GMSしか見ていない人にはマーケット全対の顧客動向が見えにくいのでは?

 

百貨店の子供服はそれなりのグレードがあるので、価格は大人並みになる事(素材の用尺が小さい部分の格安さと小さくて縫いにくいので縫う際の振り回しでコスト高は相殺され、(振り回しについては子供服工場の慣れでカバーするも)価格の高さにはその方たちには中々理解しにくいものなのです。年数回着用後は成長して着られなくなるので、1回当たりはコスト高になるのです。

 

また、大人のフォーマルもしかり、年に数回の結婚式(日程が予定できる)や、葬式(予定が立たない)を考えると体形も変わりやすく、ウェストサイズのアジャスト可能な機能付きスラックスも必要であり、当然レンタルも考えられるのですが、葬式も当日夜のお通夜等になるとレンタルでさえ、遣いづらいのです。(結婚式事業会社や葬儀会社とのコラボも検討の可能性が)、

 

葬儀(着替えられる場所が準備されている葬儀場も多く)のその場所に配送して、終了後にその場所から返却できるビジネスも考えられますが、需要と供給のバランスを考慮して、ビジネスになりえるのでしょうか?ビジネスとは需要と供給とその対価とのバランスであり、これが取れるのなら手を出すべきなのです。誰も手を出していないのは儲からないからかも?

 

上記レンタルストアもイオンのセレブレートスーツは5800円から1万円程度が中心であり、わざわざ3泊4日で6000円のセレモニースーツをレンタルする必要があるのでしょうか?まして女性ならスカートであれば裾上げの時間も不要であり、持って帰られるのです。それが出来るのにイオン越谷レイクタウン店(4年前に)と次に出したこの新百合丘店の2店にわざわざ来られるのでしょうか?今年9月にはイオンモール土浦やイオンスタイル板橋から店舗拡大の構想ですが、

 

このビジネスについて4年前にイオン越谷レイクタウンに初出店との事ですが、殆ど話題にもなっていなく(小職は幾度もレイクタウンには訪館していますが、意識していないから見つけられていません)、何故今頃2号店なのでしょうか?儲かるか否かの検証をしていたのであれば、初速(長くても半年)で予測は見えてくる筈でしょう。

 

過去にレナウンがレンタル事業に参入し、半年毎の入れ替えで価格は抑えていたのですが着て返された(預かっている=同じものをクリーニングして貸し出す)在庫過多で失敗し、最終の在庫処分は大赤字でした。勿論、在庫管理の杜撰な責任者も敗因であったと思われますが、スーツはカジュアルよりも流行が即判るアイテム(スーツなら何でも良いと言う人は別ですが)で、時代時代に形(シルエットや襟)も異なるのです。

 

同様に紳士服のアオキも手を出し、企画マンは服好きであり、毎月2着をレンタルするビジネスモデルであったのです。企画マンは服好きであったと思われますが、自社のお客様は同じではなく、一般な男性の年間スーツ購買数は1.5着にも満たないのです。即事業撤退(創業者の早期な決断)で痛手は大きくなかったようなのですが、思い付きの域を出ていなかったのでは?

 

通常レンタル事業は買った場合の十分の一程度の価格が一般的であり、貸す側は11回目から利益が生まれるようなのです。これを業界のスタンダードとすると、「儲かる」と判断した理由は何だったのでしょうか?上記やって見ないと判らない事業なのだったのでしょうか?

 

確かにお客様はデザインや素材を触って選ぶために1回はお店に来られるのですが、適当に素材もデザインも何でもOKとのお客様なら大丈夫でしょうし、また一度は見て触って見てのお客様で、その後同じ物のリピータならOKでしょうが。リクルートスーツセットのレンタル価格が1か月6000円は安価であり、この部分(期間が長い)だけは客層にマッチしていると思われます。

 

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

 

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。

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