生地 雅之

2022 18 Jul

根拠のないEC数値目標

最近、ECの予算作成に課題が生じているように見えます。

リアルであれば、前年実績に数%のUP&DOWNにてほぼ見える(つまり手の届く)予算に見えてくるのですが、ほぼ前年やった事がある数字に近いので、何とかやりきれると現場も判断される事が多いのが実態です。それでも経済環境の大きな変化の中、手が届くか否かは別問題なのです。

EC予算においては前年比に対しては大きな伸びを期待されているのですが、根拠も見えていないのです。米国の一部の百貨店のEC化率が45%になっている事や、アパレルや小売業もぶっ込みでの「業界でのEC化率が30%程度が妥当」という風評(WEB広告のROASが5倍というっ風評と同様に誰が決めたのか不明)に基づき、上層部がなんとなく希望的観測的な数字を出しているのです。

一般的に小売業(GMSや百貨店)のEC化率は売上の2%程度(1~3%)であり、一気に30%は無理だから、経営層は当面10%と指示されているケースが多いのです。某大手GMSも某大手百貨店も10%が多いのです。それをまた現場(事業会社の社長等)で実績の5倍位に設定しEC化率5%程度に落としたり、もっと現場(事業部長や店長辺り)だと3%(現状の150%)程度にトーンダウンしてきているのです。その数字の根拠は何もないのです。要は目標値を下げて、出来るだけやって予算に大きく遊離しないポイントを模索しているに過ぎないのです。

本来は、まず
1.    自社サイトがどうありたいのか?
2.    このありたいサイトが出来たなら、いくら売れる(売る)のか?
3.    この目標に何年かかって構築出来るのか?
このようなサイト構築のWILL(意思)を表明し、どのようなフローで構築していくのか?併行しての自社施策の効果計測も不可欠です。
コンテンツ開発、SKU、UI、WEB技術、プロモーション等を駆使して、自社・自店のお客様にどのように見せて購入して頂くかに尽きるのです。ベースは「サイト・ブランディング」に尽きるのですが、


このWILL(意思)なくして、根拠レスの数字の組み立てのみでは出来る事も出来なくなっている事に気が付かないのです、上層部は数字を出せばと思っている筈ないのですが、どうして構築するか(売上予算達成)は現場がやる事と考えているのなら不可能です。部下に命令してやらせることが上司の業務と考えているのなら不可能でしょう。

現場として、上層部は数字を指示するだけで、やるのは我々現場(ミドル)なので、「そう簡単に出来る筈もない」と思っているのです。要は上層部(トップ)が自ら研鑽して、自分でやらずとも現場に何が必要で何が欠けているのかくらいの把握ができ、どうすれば解消できるか位の認識は必須です。「知恵は外部で、作業は内部で」ではあるのですが、自ら理解できない(していない)事を外部や部下に丸投げではできる筈もないのです。

過去に某百貨店の常務は技術も含め、経営陣全員が理解しないと契約しないと言い切った人が今や現場に丸投げ状態であり、断る方便であったとは思われますが、この意識ではリアルの落ち込みもカバー出来ないECにしかならないのです。現場を知らない(勉強しようとしない)経営者がTOPにいる小売業は今後は迷走する事は間違いないでしょうが、現場に精通しているだけで経営が出来る事とはイコールではないのですが、

現在はまだECはリアル(店頭)以上にモノ中心からは逸脱出来てはいないのですが、将来はリアル同様に「コト提案」型に変えて、テースト軸ライフスタイル型ブランド(売場)によるアパレルのみでないライフスタイル・コーディネイト型にシフトしないとEC化率30%どころか10%にも届かない段階で足踏みすると推測されます。要はこのサイト構築ビジョン(WILL)と数値目標と具体的施策との3点セットで将来のリアルに勝るオンライン売上を構築していく必要に迫られているものと思われます。

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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