生地 雅之

2022 11 Jul

小売業の経営者の必要な事

最近、小売業の経営者が2極化してきていると見えるのです。
一つは家業から脱し切れていない会社であり、企業規模が大きいだけで一人のオーナー企業と同様に、その方が右向けば部下全てが右に向く、規模の大きな家業も存在しているのです。

また、経営層が議論しながら正しいと思われる討議をクリアしながら、妥当な経営に向かっている会社に2分されているのです。結果を出せている会社が正解なのです。
家業が間違っていると言っている訳ではないのですが、そのTOPが道を間違っても誰も何も言えない環境に陥っているのです。だからと言って合議制の企業が結果を出せるかは別なのです。

会社としては、誰がTOPに座ってもある程度の結果を出せ、会社の安定性を求めるには企業になっていないと難しい事は明白ですが、大きな家業は現在のTOPが降りれば、業績は「奈落の底に向かってまっしぐら」に見えるのです。間違っていると感じたり、考えているのに上司に提言できないのは給料を貰って仕事しているサラリーマンとしてはいかがなものでしょうか?

いち早く経営層に意見を具申し、間違った方向に向かないようにすべきなのですが、異見を具申できるか否かに掛っているのです。誰が上層部に物が言えるのでしょうか?言わないで社内改革や改善などは出来る筈もないのです。部下は命令すればある程度は動くのですが、ミドル(中間管理職=代表権のない取締役~部長以上)は如何にトップ(代表者)に物が言えないと会社は動けないのです。

トップも「意見は最後に出す」と自分の影響力を鑑みての発言も聞こえるのですが、実は「最後まで我慢して言わないでおくべき」なのです。最後でも言ったら部下はその通りに動くので、「自分の意見はONE-OF-THEMと聞いてくれ」との思いであっても、言われた側は命令と取り、そのトップが発言するまでは本音も言わない(言えない)のです。トップは自分を知らないからなのです。我慢して後継者の育成に向かうべきです。自分が作った会社は少しぐらいぶれても崩れない自信を持っている筈なのです。

小職の前職で担当していたGOLFブランド【45歳中心ターゲットでのBEFORE&AFTER用】で当時の社長【57歳】が「ゴルフには渡り(太ももの幅)が太いので細くしないと」とMTGの最後に発言ざれたのです。上記のように「ONE-OF-THEMとして聞いてくれ」とのコメントであったのですが、
小職は当時のこのブランドのコンセプトや顧客ターゲットがその時点で間違ったマ-ケティングであったのかは別として、「このブランドの狙っているターゲットは社長ではない」と言い切り、意見を採用しなかったのです。結果3か月は口を利いて頂けませんでした。

「出る杭は金槌を壊す」[替わりの人材がいるのなら異動してくれ」との生地語録(生意気)の最たる事例だったのですが、その3か月の間に社長は別の部長に「生地は言う事を聞かない」との愚痴をこぼされていたのです。いつも記載していますように「うざい奴」が業績を上げ続けた(売上額前年比120%、営業利益額前年比140%を数年だけでは不可能)ので、前職が一部上場していた当時に取締役にして頂いたのですが、可愛がって預いていたとの認識違いで、「使える駒」の認識・評価しかなかったようなのです。現在の前職の企業は?

異見を具申するには「草履を懐に温め」、自分のポジションがある程度崩れないようになって(トップに座って)から意見を具申する事も必要で、中途半端なポジションであれば潰される事も想定されるのです。現在の政権も与党のトップは前任者や前々任者とは考え方も異なるのですが、じっと我慢してトップに座ってから前任否定をしているのです。やっている事をトップに就任する前と比べてみれば一目瞭然なのです。要は「天下を取ってから」なのです。途中で異見を具申された政治家の運命は?過去に遡って見直してみて下さい。正しい事と思う事を通すには?

もう一つは、特に小売業のトップは56~57歳くらいに就任される事も多いのですが、第三者から見るとどの方も「団栗の背比べ」なのです。勿論自分は他社のトップとは違う(自分は出来る)とのプライドは重要でお持ちなのですが、大差はないのです。理由は22歳位で会社に入り、35年前後経過してトップに座られていらっしゃるのですが、その35年間の研鑽が他社のトップとほとんど変わらないと見受けられるのです。

何時も言っていますように、欧米のようにトップが研鑽して会社の隅々まで把握して、的確な指示を出してやらせて結果責任も取れるトップは日本には殆ど不在なのです。日本は現在「二人三脚型」の経営であり、トップがスタッフ系であり、現場の精通している人に営業を任せるか、トップが現場に精通しており、経営や管理部分は優秀なスタッフに依存しているかなのです。先日GMS大手2社の決算発表があり、営業利益額・率をみると大きな差があるのです。勿論儲け方が違う2社ですが、ビジネスとしてみるとどの方向を選ぼうが売上額よりも利益額がすべてであり、伊藤忠商事の岡藤氏が言われるように、「企業は潰れない事、延命しないと挑戦もあり得ない」のです。

言いたい事は最近社長を降りられた某玩具メーカーのトップは94歳であり、後継者不在という事もあり長期間トップに君臨され会社の再興もされたのですが、この方が22歳で入社されたとすれば72年間の大半をトップに座り、研鑽されてこられたのでしょう。このキャリアを一般的に言う56~57歳で身に着けた人がトップになって頂きたいのです。しかし現在そのような人は誰もいないのです。出来ないと思わずにそれに向かって邁進して預きたいのです。そのためには「情報や知恵は外部から」であり、自らの研鑽のみでは必要とされるレベルには程遠いのですから、「己を知る」事からです。年齢が若いからできるというものではなく、「短い時間で研鑽を!」なのです。

過去で言えば某大手アパレルの大B氏などは38歳でトップに君臨され、30年間という長きにわたって経営をされていらっしゃったのです。これだけを見て出来る人というのは早計ですが、何が維持・継続できたのかを考えると何もない筈はありません。現在は望むべくもないのなら、結果(業績を改革・改善)を出せる人材が一人では無理なら、上記の「二人三脚」ではなく、これからは「三人四脚」の時代になるべきと思われます。

つまり、現場と経営・管理に精通されている2人の番頭(助さん・格さん)を従えた水戸黄門のようにその番頭から上がってくる案件を即座に判断でき、例えば「右45度に向け、左60度に向け」との的確な指示を出せる経営者とチーム(番頭2人)が望まれるのではないでしょうか?勿論即座の判断には現場や経営・管理を理解した番頭とジャッジできるトップがいないと出来ない難しさがあるのですが、

最近、「AIを使用しての業務改革を」と目に触れる事も多いのですが、リーガルチェック(法律的な文言チェック)はできても、ビジネスチェック(儲かるか否か=どうすれば儲けられるか)の確認が出来ないので、事業の失敗が後を絶たなく、新規事業は「華々しくデビューし、失敗したらこそっと手仕舞い」の如何に多い事か、やって見ないと判らないから手を出されているようですが、やる前に失敗が見えている事に確認もしないで手を出している事に気が付いていないのです。結果から見るとトップを見過ぎている各社の経営企画会議は機能していないのでしょう。

FRもトップは「お客様は真ん中に」と言われても、掃除とレジはお客様任せ、品出しは人海戦術なのです。機械(ロボット)を使っての「お客様が真ん中に」を実践しているのでしょうが、これを見てもやり方は様々です。これだけ経済環境が変化の中、旧態の対応で乗り切れる状況なのでしょうか?50年前に成功した館(SC)づくりを現在に合わせられないのは何故?

既存顧客のデータはあるにも関わらず解析できていなく結果が出ないのは、解析能力とマーケティング不足に尽きるのでしょう。良く新規事業案件について、可能性をお問い合わせ受ける立場なので、相談も多いのですが、弊社はソリューション型コンサルであり、お困り事をお聞きしてからの対応策を提言しているのです。既に困っている事自体認識されていない(売上・利益以外に何が困っているのかが判っていない)トップやミドルの如何に多い事か?

この事象を見る限り、小売業のトップは現場を理解されている事が重要で、だからと言って現場に長けている人が座る事とイコールではないのです。スタッフ畑でも現場で何が起きているのかを認識されている人はいらっしゃいますので、現場に何が起きているのかと対処方法をを判断でき、やらせられる人がトップに座れば何も問題はないのです。問題はトップがそれを認識され、現場の事も研鑽しようとする姿勢が必須ですが、ヒントもお金も現場にしか落ちていないからなのです。見つける力と拾う体力がないとNGですが、

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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