生地 雅之

2025 20 Oct

提言・8

最近考えさせられる事が多いのです。
1.    百貨店の提案の速さと実態のずれ
最近のアウトドアは漸く地に足が付き始めており、スポーツメーカー各社が漸く本格的なビジネスに参画しつつあります。百貨店では数年前に手を付け、導入期、最盛期、衰退期を既に経過した終わったコンテンツなのです。このブログでも昭島のアウトドアビレッジを取り上げたものでした。実需はこれからであり、一般人は漸く火が付き始めました。
外商やインバウンドの落ち込みの対応は遅いのに、これは早いのです。ビジネスは儲かるビジネスの拡張と儲からないビジネスの縮小なのですが、時代に合わせてこそ営業利益が確保できるのです。このずれは如何に?

2.    百貨店の経費節減策
FRのポリ袋の有料化はともかく、紙袋までの有料化は如何に?これに追随しての小売業も有料化に走り、デパ地下では百貨店の手提げ袋は有料であり、メーカーの手提げ袋は百貨店側のコスト増になるから無料なのです。お客様にとっては反対では?

過去の消費者目線にも記載の百貨店らしさの「デパ地下」と「デパコス」と言う言葉があるように、現在はこの2つが百貨店の安定を支えているのです。よって、デパ地下では「食品スーパーのようなカートを敢えて辞めるべき」と提案しているのです。

小職はユニクロで勧められる食品スーパーのような籠を使用せず、勧められても断っているのです。ユニクロは衣料専門店と言う認識だからです。このような人が多く存在するとは思えませんが、百貨店はコスト削減にオリジナル策はないので、他社のコピーなのです。勿論真似は否定はしませんが。

百貨店は人事コストの削減では常務執行役員が5名「退任」しても通常の執行役員を3名程度作り、総人件費コストを下げているので、昇格が少なく社内のモチベーションが上がらないのです。政治家の人員や給料削減と同様即できるのですが、政治家にも多く払ってそれだけの仕事をさせる事が出来ないからなのです。
またジェスチャーか。入店での団扇の配布もそうですが、作成経費と冷房代の相関関係は、販売員まで接客中に団扇で扇ぎながら接客するのでしょうか?余分なフロアガイドの作り過ぎや必要量を見極めないエコバッグの作り過ぎなど、マーケティングができていない証左なのです。データを集める事は一生懸命なのに、分析・解析によるMD力のなさはCRM・CRMと言って何をすべきかも理解できていないレベルなのです。

リニューアルもそうですが、訪店してもどこがリニューアルしたのかわからないレベルで、小職のようにHPを見て行っても判らないレベルなのですから、百貨店はともかくGMSは一推しが判り難く、どれがメインで紹介したいのかが不明で、マスコミの使い方が下手なのです。

3.ECについて
また、福袋が都心店の店頭から消えつつあり、ECでの販売に切り替わるのはともかく、 中元・歳暮が年々落ちてきており、過去からも半減強なのに、いつまでも(過去の利益率が高い婦人服同様)しがみついているのです。百貨店の包装紙や紙袋が必要なら、過去にイトーヨーカドーでそごう・西武の包装紙での贈り物ができるとの事や京王百貨店や三越伊勢丹のサテライト(ららぽーと新三郷やセレオ八王子、ららガーデン春日部)等が潤わないのは何故なのでしょうか?

商材はともかく売り方が変化してきており、OMO(オフライン&オンライン)に移行しつつありますが、両方足して同額なら経費の掛かるECは不要であり、リアルはそのままでECを利便性の改善により、リアル同等まで引き上げる事を模索して欲しいものです。米国や中国では地域的に不便さも多く、リアルとECがほぼ均等なのですが、日本も将来は利便性(タイパ・コスパ)を追求すれば間違いなく近づいてくることでしょう。如何に買いにくい画面の多い事か。いくらシステムが成長しても使い方ができない担当者と買い易い画面構築のないサイトでは上がる売上も上がらないのが現実でしょう。

4,    情報収集について
  小売業のバイヤーが業界情報が得られなくなって久しいのです。経費削減で業界紙も取れないし、フロアで数部でありそれも役員の横や後ろにおいてあり、「いつでも誰でも見られる」とは言っているのですが、取りにくい環境にあっては誰でも見られるとは思えません。百貨店側も提案不要との企業も、全部自前で失速し、売られた企業も。

  バイヤー(百貨店は既に殆ど場所貸しで、セレクター「名刺にバイヤーと刷っていない」が多く、業界情報が不要だと思っているのでしょうか?これで自主編集を増やしている企業もあり、利益率の高い買取PBもできる筈(やる気もない)もなく、本末転倒なのでしょう。経費削減の意味を経営層は取り違えているのでしょう。

  過去には業界紙のクリッピングが必要箇所に配布されていたのですが、現在は情報供給側からのプレッシャーもあり、経費が増加するのでクリッピングを辞めているようなのです。クリッピング業者は現在も存続しているようですが、

  過去には前職で企画スタートさせるときにはアイデアをクリエイトする時は素材からのアイデアが基本なので、デザイナー全員に産地出張を同行させていたのです。産地の倉庫に入り、試作品や中止になった素材からヒントを得て欲しいからなのです。素材メーカーの営業マンが持ってくる資料の中から選べば、その営業マンが考える我々のブランドの次シーズンが「こんなものだろう」との枠内で泳がされるからなのです。発注する時は営業マンに来て預き、打ち合わせしながらなのですが、現在ならPCやリモートでも。メリハリも重要です。

  最近に業界紙でも裏が取れていない(確認不足)記事も多く、読む側も「これ本当か?」と疑ってみる事も必要不可欠です。最近の小売業はプロパー売上が伸び、セール売上が鈍化しているとの表現ですが、単月でのセール比率は高い月は、全体での売上の落ち込みは避けられていないのです。営業利益は改善していても、営業利益額が前年以上確保できているのかは甚だ疑問です。

先日の業界紙に、プロパー売上が伸びているとの表現があり、その次の日にはセール売上好調の記事が掲載されており、どちらも事実なのでしょうが、果たして小売業にとってはどちらが重要なのでしょうか?利益額でしょうが、読み取る側にも視点が重要なのです。

5.百貨店とFBの同質化
  最近都心百貨店が「コト提案」をし出し、FBが「ラグジュアリーブランド」を展開し始めていました。FBがラグジュアリーブランドの展開するのは売れるものにシフトしているので仕方ない部分もありますが、同親会社で両方展開している企業では同質化しているのです。もっと、差別化できないものでしょうか?同質化するならいっそ屋号を同じにすべきではないでしょうか?

お客様は屋号についているのですから、三越伊勢丹も大丸松坂屋もそごう・西武も阪急阪神も屋号は変えてはいないのですから、屋号迄統一したら、売上は激減することを認識しているからなのです。今回の本州西友を傘下にしたトライアルは如何に、また今まで認識されていた2ndStreetの2ndホールディングスへの名称変更はどう出るか?

心斎橋PARCOは今まで好調を推移をしていましたが、百貨店同様に売り上げが低迷してきています。基本的に前任者が人事異動の後の2年くらいは仕掛け等の影響が残っているのですが、既に人事異動して2年以上経過しているのです。過去にはそごう心斎橋店の名残でラグジュアリーのお客様も少なからずいらっしゃったのでしょうが、PARC0はFBなのです。

川口そごうを手に入れた三井不動産のららテラス川口同様、既に屋号迄FBにしているため、入店客はFBとして来店されているのです。50~60歳代の多い百貨店ではなく、30~40歳代が多いのです。百貨店カード顧客の実態を見れば一目瞭然なのです。
イオンが一時GG戦略(グランドファーザーやグランドマザー「シニア」にやさしい店として標榜していたのにオーナーがこのままでは将来がないとヤングシフトしようとさせたのですが、実態はそう簡単には行かないので、現場(店)はまだその戦略を継続しているのです。

  イトーヨーカドーが読み間違えた食品売り場に来られている30~40歳代のお客様(実際は50~60歳代)を上層階の衣料品売り場まで上げたい意向で、アダストリアに「FOUND・GOOD」の企画を丸投げして大量の不良在庫を処分している実態を見れば、一目瞭然なのです。現在は大量の在庫処分のため、一等地に大きな面積で展開していますが、値引き率は大幅でもなく、在庫のメーカーの引き取り交渉ができたのか?在庫を処分するな(値引き赤を増すな!次年度の持越しを覚悟したようですが、)との指示が出たかは不明ですが、

ラグジュアリーブランドの定義(ブランド区分)は都心百貨店と異なるのは当然ですが、売上額の差は大変異なるのです。同様に渋谷PARCOも同様です。逆にいままでラグジュアリーの恩恵を享受していなかった仙台や上野・名古屋等は健闘し出しているです。百貨店同様手直しすれば効果が出てくるのです。手直しできない(しても失敗の店)は効果がないのです。池袋のようにルミネ池袋(過去のメトロポリタンプラザ)に食われているのでしょう。デべノウハウの差か?現在のルミネのTOPは西武プリンスHDGSのTOP同様に上ばかり見ているのでのNGでしょうが?自分の考えが見えないので。

   過去に東京大丸の本館ではない方をテナントだらけにしたときには、「本館は大丸でとなりの方はPARCOにすれば!」とのダブル屋号の提案をしたものですが、今は大丸も場所貸しだらけなので、問題はないのでしょう。既に地方・郊外店も延命策ですべてGMSやFBやSCと何ら違いもなく、都心的な百貨店が少しグレードの高いテナント揃えで、地方・郊外店がSCやGMSとの違いが判らない位のレべルなのです。もう百貨店と言えないのでは?勿論百貨店の定義からの見直しも。

6.SPAの強さと弱さ
  FR(ユニクロ&GU)やMUJI、LOFT、しまむら等はSCに何を言われてものそのままの屋号で出店しており、それ以外のSPAやアパレルはそのFBやSC初と訴求したい要望に合わせての店名を付けて出店しているのです。突っ張らないとショップブランドも守れないのです。ブランドにはショップブランドとグッズブランドがあり、小売業は自社のショップブランドを守った出店をして頂きたいものです。アパレルも百貨店にもセレクトを付け、現在はFBやSCにもセレクトを付けたままの名前で出店しているので、差別も区別もあった物ではないのです。理由はどうあれ、お客様からどう見られているのか?

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。
是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
弊社へのご連絡は、APPAREL-WEBのお問合せにより、お願いします。