生地 雅之

2022 17 Oct

天神~博多地区百貨店リサーチ

先日表記地区に行ってきました。

1.岩田屋+新館、三越、博多大丸+エルガーラ
岩田屋+新館は殆ど閑散としており、今後の維持は難しいように見えます。特に三越との同じ企業での展開であり、三越も同様であり、B1Fに過去に導入されたラシック(名古屋本店のヤングマインドの三越のFB)でありながら現在はミセス~シニア向け展開になっており、ラシックの名前を汚しているのです。PARCOの渋谷と新所沢(近々に 閉店)の差同様ですが、

大丸の食品売場はそれなりに賑わって元気ですが、上層階やエルガーラ(別館)は死に体の状況で、各社場貸しでは生き延びてはいるものの、未来は全く見えません。このように3店併せても天神地区には百貨店はオーバーキャパなのでしょう。今後生き延びるために特f長を出した差別化もこのマーケットにそれを理解されるファンが少なく思われ、その戦略だけでは維持できないのでしょう。

特に、新館は首都圏であろうとも、どこの店舗でさえ不調であり、伊勢丹新宿店のメンズ館、三越日本橋の新館、銀座三越の新館部分(本館と殆ど繋がっており、新館とは呼べないので、新館と呼んでいる事自体問題か?)や高島屋日本橋本店+新館、渋谷西武のA館+B館、地方店でも熊本鶴屋等も該当します。

また、1MDを2館に区分した(これも苦戦の原因の一つ=各館1MDにすべき)上記店舗とは異なり、百貨店層狙いではありながらターゲット層を変えての展開をしている阪急本店∔阪神本店やチャネルそのものを変えている新宿高島屋の別館等も苦しさは見え隠れしているのです。(家賃で維持できている程度か?=阪急うめだ本店のメンズ大阪は阪急の認知度とMD力の強さでカバーか?しかし、過去に阪急INGSは閉めていますが、)

このような実態を見ても、天神地区の店舗数及び新館の位置付けは今後の大きな課題になるように映ります。既に各企業では店舗集約は検討されているとは思いますが、どのような方向に向けるのでしょうか?下記のように早めの業態変換が必要不可欠と考えますが、新館を閉店し再度売り場面積を小さくし、少ないSKUで如何に高い売上・利益を追求すべきでしょう。

マーケットは百貨店のみではなく、百貨店で働いている人でさえ、衣食住百貨店(自店)で購入されている人は殆ど皆無であり、一部の商品を百貨店で購入され、例えば食品のみは自宅近場のGMSで購入されている方も多いのが実情なのです。

この事を見ても、周辺の自店に通えるお客様しか売上に寄与していなく、それも来店可能なすべてのお客様を囲い込めている訳でもありません。まずは既存MDでどこまでカバーするのか?の頂点を決め、それのどの位を確保の目処(自店でできる限界)を定め、その売上・利益に向けて精一杯やってから、新規MD(次世代等)に向かうべきではないでしょうか?

その精一杯も既存のMDで、衣食住の1つか2つのカテゴリーを購入されている人に他のカテゴリーを買って頂く。また、ターゲット層は同じでもすべての顧客を取り込めている訳ではないので、MDを変えないで完全新規を他店へ取りに行くべきなのでしょう。精一杯やってこれだからこれ以上は無理と思われているなら、まだまだ限界ではありません。やりようはあります。

そして次に、新規MD(衣食住フルラインで)を追加して、次世代(既存顧客のお子様達=一般的なら団塊JR)をターゲットに据えるべきでしょう。今まで百貨店層の親を見て、その家庭で育ってきている人達なので、生活環境そのものが百貨店に染まっている人が多いのです。

また、その孫たちは小さい子供達であれば、親が購入されているので、4ポケットでありながら消費金額は5~6人分にも及ぶものなのですから、過去から提言しています三世代百貨店層をFAMILY(家系)で追ってビジネスを考えるべきで、新規MDの追加は、マーケティングの見直し、必要な商品の見極め、開発・調達などハードルが高いのが実態なのです。

マーケットを見ると当然百貨店層ばかりではないので、札幌同様にファッションビルのまともな館が少なく、天神は現在工事中の場所が多いので、数年後にはFBの館が乱立する様に見えますが、ターゲットを変えて存続も視野に入れると見えない世界も見えてくると思われます。

岩田屋三越なら、岩田屋の新館を閉めてでも、三越を百貨店に特化し、場所貸し等の延命策のみではなく、岩田屋本館FFBにリニューアルすべきなのでしょう。岩田屋の外商顧客は難しいとは言わず上手に三越に移行して預き、バスターミナルという立地の強さをもっと活用するべきなのです。

ラシックは岩田屋に移し、1層程度ではなく、多層階展開でも、店名をラシックにしてでも。岩田屋の名前を残すなら三越を変えてでも。過去から提言していますように、札幌や仙台の別館(一四一)等も、新館や別館を現在の本館の百貨店MDの延長ではなく、従来の百貨店顧客層を変えて、違うターゲットを狙うべきなのです。基本的には1館で面積が小さくてもフルカテゴリーにしないと感を跨いでの買い回りはされないのですから、

勿論、誰が見ても「やっつけ」のようにしか見えない国分寺ミーツや日本橋高島屋SCの新館部分のようにしては、できるものの出来ないのでターゲット設定をしっかりとしたPMの真剣さも必須ですが、阪急阪神百貨店も西宮ガーデンズの運用ノウハウ(ノウハウのみでなく人材も)は早急に電鉄から入手され、地方・郊外店の再開発に活用されるべきでしょう。

2.博多阪急
博多駅と直結の掲店は福岡では唯一百貨店然としており、駅ビル立地もあり、入店客も多いのです。まだこのMDで延命可能なのでしょう。今後はどうなるのか?但し、過去から提言していますように呉服系百貨店は早急に電鉄と合体すべきと思われます。

掲店は電鉄系であり、自社電鉄が無い地域であり、JRとのジョイントとは言え、トラフィックメリットは享受できていると言えるでしょう。前述の福岡三越も電車ではなく、バスターミナルですが、横には西鉄の駅もあり、経営層は考えられているとは思われますが、活用はまだまだ出来てはいません。博多阪急は近くにバスターミナルもあり、広島そごうも福岡三越同様です。

過去にもどこかで記載しましたように、私鉄9社+JRの10社の決算を見ても、不動産業の営業利益率の平均は2桁も軽くあり、小売り・物販の営業利益率はその10分の1程度しかないのが実態なのです。売上額はほぼ同じ程度なので、民間のSC以上の利益率です。

これを見てもこれからの小売業が「トラフィック立地」を優先するか、「陸の孤島」狙いか、あるいは両方か、但し「陸の孤島」は近隣に同業他社が出店すれば終わってしまうのです。その地域に他社が出ていないのは、顧客が存在しない場合もあるのですから、手を出すべきか?

他社に取られる位ならの出店では、過去のそごうの様に、八王子そごう、橋本そごう、柚木そごうの3店舗がすべて閉店した(他社に取られるくらいなら自ら出店)という結果に問題があると言えるのでしょう。経営にとっては「ローコストオペレーション」は永遠の課題なのです。

小売業は装置産業なのですから、同じエリアに3店出店すれば売上の3倍確保は難しく、食い合って良くて2倍程度なのです。人件費や運用費は3店舗分掛かるので、赤字の垂れ流し状態が続くだけなのです。「大きい事は良い事だ」だけでは小売業は継続できないのです。

たばこ産業のセブンスターから派生したマイルドセブンやセブンスターライト。トヨタ自動車のカローラから派生したスプリンタ-やフィールダー等は他ブランドに取られるくらいなら自分でとの戦略なのですが、必要に応じた生産調整が可能なので、問題がないだけなのです。

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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