生地 雅之
店頭リサーチ「東京主要百貨店」
毎年恒例の新春の店頭リサーチが始まっています。既に3月ですので年始ではないので、通常の店頭レポートに戻しています。
3月の最終日曜日に都内百貨店中心(横浜も含む)にリサーチしました。最近商業施設(FB&SC)中心にリサーチしていましたので、久しぶりに百貨店です。但し、三越伊勢丹(基幹2店+銀座店)は別途記載予定ですので今回はパスしています。東急も百貨店そのものの存続に問題が見えており今回は外していますが、
小売業において、百貨店は価格ラインやサービス的には頂点にある事は事実ですが、それ以外のFB&SCやGMS等の方が売上や店舗数のシェアも高く、一般的にはこの部分を利用されている方が多いのです。
百貨店マンや経営者でさえ、多くはこのような他の業態を直視していないケースも多く、同業他社でさえHOME-PAGE以外ではリサーチもされていないケースが多いのが実態なのです。
この様な状態(現場を見ないトップ)で百貨店を語り、MD方針を出しているのです。ボーダレスの世の中では間違って当然と言えるでしょう。現場を見たからすべて正しい判断ができるかは別問題なのですが、見ないよりは、
176.そごう横浜店
掲店は「大きい事は良い事だ」時代に作られたお店で、千葉そごう、池袋東武と並ぶ9万平米台のお店の一つなのです。ともかく大きいので、ラグジュアリーブランドの世界観もそれなりに出しやすいのです。拡大リニューアル当初の売上は西口の高島屋の半分強しかなく、現在はかなり追い上げているのです。
横浜地区では売上額は現在髙島屋が一番店ではあるのですが、その差はどんどん詰まってきています。この地区では西口駅ビルのジョイナス、東口のルミネ、地下街のポルタ等の商業集積が安定した売上を誇っています。ほかに新しくNEWoMAN横浜等も出来、過去からマルイやモアーズ、少し離れたVIVRE等競争の激しい地区なのです。
掲店は広いだけでMDの集約等は出来ておらず、大味のMDなのです。しかし、これだけの面積があると様々な事がチャレンジ出来る広さなのです。そごう・西武としては持て余した結果なのでしょう。
過去に紳士服の部長からリニューアル後に靴の売上が大きく下がり、3万円以上の靴が全く売れていないとの相談を受け、現地を見に行き通路を歩いている人に顔を見られる試し履きをするソファの向きを反対にするように(お客様がどのような靴を試し履きしているかを通路を歩いている他のお客様に見られないように)アドバイスし、一気に売上が回復(3万円以上の靴が売れだした)した事を思い出しました。
この件はFBやSCのフードコートを透明のガラス張りにしないで、摺りガラスにする提案(何を食べているのかを見られないため)と同様の主旨です。
JR横浜駅の東西の往来は地下が便利であり、通行量は半端なく多いのです。新宿三丁目から新宿駅に繋がっているお店がない地下通路(ここも結構人通りがある)に比べても数段多い人通りなのです。
176.高島屋横浜店
掲店は最近地下の食品売場をリニューアルし、以前より強い食品をより強化されており、素晴らしいもので、5F以上の上層階は隣のジョイナスまで広がり、1フロアの面積が4Fまでよりも大きいのですが、中央に現在事務所や在庫保管場所にしか使えないゾーンが固定され、回遊性が出せずに勿体ないのです。
中央の事務所の有無以外の5F以上のフロア繫がりは、浦和伊勢丹の隣のコルソと同様なのです。またフロアの中央の売場に出来ないなゾーンは伊勢丹新宿店B2F同様であり、B1Fに比べ大幅に小さい面積なので、使い勝手が悪いので勿体ないゾーンなのです。
177.高島屋新宿店
出来た時からMDの方向性を間違っていた店であり、新宿トップの伊勢丹に喧嘩を売るようにチャレンジャーとしてヤングのターゲットに向けたMD(1番店狙い)で、暖簾(ショップブランド)の強い「高島屋らしくない」と売上が低迷していたのです。結果京王や小田急に後して4番店に埋没してしまったのです。
店を作る時に高島屋のトップが頭の固い幹部に「横のモノを立てにするくらいの柔軟な発想を」とのたとえ話をそのまま実行された(そのような事ではないと思いますが)と揶揄された店なのです。過去には松屋銀座は多層階のメンスを1フロアにし、紳士の売上が大きく低迷したことも事実なのですが、縦積が正解ではないのですが、
この店はJRの家賃が高く、単年度の利益が黒字になっても累積赤字でいつまでも黒字にならないと言われていたものですが、トップが1000億円とも言われる投資で買い取り、社員のモチベーションが大きく改善した店なのです。素晴らしい経営判断なのですが、いつもの如くがらがらなのです。
最近高島屋はホームページでリリースされた「エコビズボックス」使用による段ボール等の紙の削減に向かっているとの事ですが、素晴らしい事例です。このエコビズボックスとは繊維を袋状にし強化板を入れて箱に使用しているものなくです。衣料品で言えば通常納入時は季節の立ち上がりが多く、10ケース満載で納品したり、その前シーズン物(セールの残品)を返品する時が一番多いのですが、後は追加程度の量しかなくそう多くは使用されないのです。
但し、通常の段ボール箱(メーカーからの納品箱の再使用がほとんど)での移動なら4回くらいで駄目になるとの事で、この箱なら20回位使用しても損傷がないとの事なのです。また、この箱なら折りたためるので10箱を納品後に商品を全部店頭に出した後に、9箱を畳んで1箱に入れると保管場所は1/10になるのです。そして箱にはRFIDの様なTIPを付ける事もでき、箱の中身のSKUが把握できるというメリットと、そのTIPで箱そのものの在庫位置が把握でき、使用されていない場合の有効活用(店間移動)も可能になるのです。
特に百貨店では強化プラスティックの箱を多用されており、空になっても保管場所は多く使用するのですし、店頭での納品された箱からの品出し業務も仕事の販売員には女性も多いので、布製によるので爪(ネール)毀損もないとの事なのです。これを納入メーカーに指定して行けば長期的な物流費の削減にも繫がるのです。
しかし、初期投資コストが段ボール箱よりも高く、人事異動の激しい百貨店であれば自分が在籍中に経費が突出するので、なかなか採用され難いのです。ここは前から提言しているように長期的に経費削減できるこの様な事例はまだまだハードルが高いのです。経営者意識であれば採用されるべき内容でも、現場の判断は自分の経費を突出させてもそれ以上儲かるなら決裁されるべきなのですが、現実はあり得ないのです。経営者自らがその地位であった場合でも決断されてはいなかったので、それ(自分が出来ない事)を現在のミドルに求めても無理でしょう。
このエコビズボックスの開発会社のトップは高島屋のトップと大学かどこかで学生時代の部活の同級生らしく、その関係で数年前に数百個使用見本として貸出され試用されていたようです。しかし何年経過しても価値計測が遅れたのか契約をされなく、漸く今回に至ったものらしいのです。このリリースは話題のサスティナブルという切り口であり、上記の様にミドルクラスの決済ではなく、経営層クラスによるジャッジと見受けられます。まさかトップへの忖度ではないでしょうが、
178.京王百貨店新宿店
いつもの如くがらがらなのです。
179.小田急百貨店新宿店
いつもの如くがらがらなのです。
180.東武百貨店池袋店
いつもの如くがらがらなのです。
過去に小職の前職で担当していましたブランドのメンズのみで5Fのプラザ館(一番奥のゾーン)の4.5坪程度で年間1.4億円売っていた事を思い出しました。この時は前職でこのブランドを企画時代に再生させ、アパレル業界の大御所(故人=元アパレルの創始者=業界のドンであった)の長男(現在は企画会社TOP)の方から「このブランドは光っている」と評価されたことを今でも覚えています。感謝の言葉しかありませんが、
181.ルミネ池袋店(過去はメトロポリタンプラザ)
数年前にデベロッパーがJRに変わり、これだけ活性化できた館も珍しいのです。デベロッパーに一日の長があり、過去でいえば東神開発、この前までは三井不動産商業マネジメント、郊外ではイオンモールでしたが、今や電鉄のJRや東急電鉄が筆頭になりつつありますが、
ここは前述の東武池袋店に比べ客層が違うとは言え、凄い入りでした。
182.西武百貨店池袋店
いつもの如く食品以外はがらがらなのです。東武池袋店よりはましですが、
会社の売却問題もありますが、一般のお客様には「どこ吹く風か?」やはり経営層がしっかりしていないと店そのものがふらふらしているようです。個人的な感覚ですが、
183.池袋パルコ
いつもの如くがらがらなのです。同じ池袋のFBの前述のルミネ池袋とも大違いなのです。渋谷は地域対応が素晴らしいのですが、
184.阪急メンズ東京
3月19日、8Fに「スニーカーヒルズ」と称した売場をリニューアルオープンさせた(元エステの場所)のですが、コンテンツはとても素晴らしいのですが、首都圏における阪急の知名度に難があるのでしょう。これを伊勢丹メンズでやれば凄い賑わいや売上が確保できると思われます。
逆に言えば、大阪では伊勢丹の知名度が通用せずに、撤退を余儀なくされたのです。要はマーケティングとプロモーションが的確ではないのです。各百貨店のコンテンツ開発力はそれなりなのですが、ローカライズやカスタマイズしたマーケティングやプロモーション不足により、上手くビジネスにはなりえていないのです。
京都駅の売店にある和菓子の「こしあんのおたべ(生八つ橋)」は夕方には毎日完売しているのですが、伊勢丹京都店にある同じものは閉店までも最後まで残っているのです。ここにこの商品があると伝われば「完売間違いなし」なのです。要は必要とされている人を「見つけられていない」、見つけていても「お伝え出来ていない」事に尽きるのです。これはこの店だけではない百貨店の根本的課題なのです。勿体ないのです。
要は小売業とは「ローカライズ&カスタマイズ」しなければ生き延びないのですから、自社・自店の購買データの解析を徹底し、自社・自店の販売実力の把握ができれば十分「勝ち組」なのです。自社・自店の顧客マーケティングの徹底以外に道はありません。ここが不備であり、出来ていると考えている限り営業利益率の改善は不可能でしょう。GMSも同様ですが、
185.松屋銀座店
それなりのブランドがそこそこ入っているのですが、食品以外はいつもの如くがらがらなのです。本人の意思もあるのか、名物バイヤーのプロとしての有効利用が出来ていなく勿体ないのですが、
186.高島屋日本橋SC(SC館、本館、WATCH-MAISON)
外商を含め上顧客に支えられている店なのです。よって、SC館も本館も何時もがらがらなのです。特にSC館は過去から言及していますように、百貨店客狙いでありガラガラなのです。既存で十分な本館の百貨店MD面積を広げているだけです。池袋東武とルミネ池袋のように違った客層を意識しないと売上の増加は見込めません。JR名古屋高島屋+タカシマヤ・ゲート・モール(TGM)は出来ているのにもかかわらず。名古屋三越+ラシックも同様。
187.大丸東京店
いつもの如くがらがらなのです。勿論「アスミセ」も売らない店とのタイトル同様に売reないのです。
188.THE SUIT COMPANY-OUTLET上野店
閉店が近いのか、それまで4層展開が2層になっており、残り物の福や商品幅もなく、同じものが沢山並んでいるだけなのです。新宿青山本店の移動につき、元の場所は契約終了(3月27日)までアウトレット店になっており、それ用の(買取?)商品の福やバラエティに富んだ商品群でした。この様に同じアウトレットでも店対応が異なっているのです。この点には問題が無いのですが、顧客満足という点では掲店はいかがなものでしょうか?
189.松坂屋上野店
外商を含め上顧客に支えられている店なのです。よって、何時もがらがらなのです。
190.PARCOya
ここはFBなのに、この街には大人(シニア層)しかいないとのマーケティングミスにより、「大人のPARCO」を作ってしまった館なのです。地域密着であるべき(ここで働いていらっしゃる人は若い人が多い)商業施設が松坂屋上野店(松坂屋顧客にはシニア層が多い)に引っ張られたようにPARCOでさえ間違うのです。
渋谷店は地域に密着させ、リニューアル当初の錦糸町店も割とまともに地域密着が出来ていたのですが、最近の錦糸町はずれが見え始めています。渋谷の成功はまぐれでしょうか?売れなくても家賃が入るので手抜き(マーケティングが真剣ではないのか、間違っているのか?)なのでしょうか?
現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。
是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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