生地 雅之

2020 11 May

三越伊勢丹・応援宣言=2

コロナの影響で経済界全体が苦戦しています。百貨店も例外ではなく大苦戦です。

全国百貨店売上は、2月は前年比10~15%程度の低下で済みましたが、3月は前年比30~35%程度の低下、4月は都心店では80~90%程度の低下、地方・郊外店でも70%程度の低下となっています。

地方・郊外店の前年にはインバウンドの売上が少なく、影響度も低いのですが、都心店では前年実績の10~30%程度もありました。それが4月度は90%以上の低下となり、全体から大きく落ち込んでいるのです。

 

しかし、都心店での80~90%の低下、つまり各社のこの10%の差は何なのでしょうか?

緊急事態宣言が出る可能性があった時期の各社は、4月は3日前後はフルカテゴリーの営業実績があり、3日までとしても1か月の10%となり、ここは確保できているのですが、三越伊勢丹はそれ以降オンラインを含め、素早く全カテゴリーの休業を決めたのです。

一部の百貨店がオンラインを閉じた理由はこのブログの数回前に記載していますので、ご一読下さい。今回5月6日に三越伊勢丹HDGSは7日よりのECサイトの復活(開業)を発表しました。

 

三越伊勢丹(大丸松坂屋のターミナル立地の店や一部の百貨店も)は食品売場も休業し、その他の百貨店(大手で一部の店のみの企業も)は食品売場の営業を平日のみとしてでも継続したのです。

百貨店の食品売場(レストランも含む)の売上比率は、全国の70%の売上を占める10大都市の百貨店食品売上では28%程度、それ以外(30%)では35%であり、全国百貨店の売上の30%が平均値なのです。その30%が緊急事態宣言後1/3に低下していて、OINLINEが全体の1%が2倍になっていて、約10%に差が出ているのです。一部の一般の方は百貨店の食品売上比率をGMSのように、65%もあるものとの認識違いもあるようですが、

この売上が緊急事態宣言後に、営業(食品や僅かと言えどのEC)を継続したか否かの比率(前年比10%程度)の差なのです。

 

三越伊勢丹としては、4月初めに全館休業を発表したのです。その後、政府の食品のみ開業の意向もあったのですが、従業員の安全第一にそのまま踏襲しましたが、現在においては本当にそれが正しい選択だったのでしょうか?世界(特に米国)では、経済STOPとコロナを天秤にかけた開業デモにまで発展し、休業による経済のシュリンクを避けようとの動きもでています。

しかし、現在の日本ではそれを妨げる状況であり、今は政府の意向を遵守すべき状態である事は否めません。政府は各都道府県の知事に「休業要請」を一任していますが、お金がないので休業補償のもできない知事には命令ができなく、7日には一部の県では開業に入り出しています。福島・うすい百貨店は7日から開業しています。宮城県は全ての業種が開業です。5月11日に高崎高島屋と岡山高島屋も開業すると8日に発表され、11日に高知大丸、13日に静岡松坂屋を全館開業すると9日に発表されました。

 

政府の専門家会議も医療メンバーでしかなく、そのTOPでさえ経済専門家会議との合議が必要とのコメントなのです。その両方が会議してバランスを取らないと、日本の経済は今年で崩壊しそうな雰囲気なのです。経済再開したとしても、あと1年延命できるか否か程度の企業も多いのでしょうが、

そうであれば、出来る限り「三蜜」を避けた環境と、「お客様と従業員の安全配慮」の上、可能な営業は開始すべきではないでしょうか?政府が百貨店層の食の供給を保持すべく方針を出したのですから、事前に先手を打った施策でも、商売人として変更するべきではないのでしょうか?「水に定型無し」です。

 

5月1日のJフロントリテイリング発表のように、いままでクローズしていた大丸東京店や大丸心斎橋店の食品も土日を除いての営業に踏み切りました。既に大丸京都店、大丸札幌店、名古屋松坂屋等の食品は営業継続していました。この発表を今まで全店閉鎖(食品も)と勘違いしている一般の方もいらっしゃるようですが、

また、決算売上が、三越伊勢丹ホールディングスがJフロントリテイリングに抜かれたとのコメントも散見しますが、今回のコロナの影響で厳しい3月度の売上を包含している三越伊勢丹HDGSと3月度の売上を包含していないJFRの売上の差を差し引くとどうなるのか?勿論、営業利益額や経常利益額は両社とも黒字ではあり、JFRには抜かれてはいますが、営業利益率はJFRが国際会計基準のため別ですが、百貨店事業のみで見ると、

 

またオンラインも、他社では百貨店の店頭在庫のピッキングは出来なくても、別倉庫やメーカーから出せる商品が少しでもあればサイトクローズせずにOPEN状態にし、「一部の商品は発注できません」との表記で、少しの品番でも前年度の全体の150%も伸ばしているのです。それはオーダー可能の品番が全体の半分とすれば、売上が倍増していることを示しているものです。

現に三越伊勢丹のある単独サイト(別倉庫では)は3月度でも大きく伸ばしているのです。そして5月6日に7日より本体のオンラインを開業させる発表をされました。1か月程度のSTOPでしたが、柔軟な判断をしたことは評価されます。気が付いた時から変更すればよいのですから、

しかし、百貨店のEC化率は1~2%程度であり前年比200%でも、リアルの落ち込みの補填は覚束ないのですが、但し、全体の方向性を理解した上で、「何をするのに、どこと組むのか」が勝負なのです。経営者自らの研鑽を期待して、一部のマスコミはそれまで営業利益や経常利益で赤字・黒字の判断で記事にしていたものが、急に当期利益の赤字に目が行き、悪い事だけをデフォルメしての表現も散見されますがスルーして、勿論改善には向かうべきですが、

 

要は経営判断(方向性)が正しくても、商売人として「売上を取りに行く貪欲さ」をもっと前面に押し出し、施策の「お客様への表現にも柔軟さ」を持たせ、お客様の立場で見やすく買いやすくすることを期待するものなのです。

百貨店の経営者はこのようなコロナの状況になってから、ECの補強に真剣になりつつあるのですが遅くはありません。気が付いた時から手を付けても、後は収束後のアパレルを含む食品以外のセール攻勢の準備が必要です。アパレルも在庫過多でしょうから、7月1日とは言わずに、父の日明けからでも、それ以前でも今回は大丈夫でしょうから、

 

三越伊勢丹は、伊勢丹新宿店を除き一般的な百貨店客層がメインターゲットであり、全店のMDを新宿店に合わせる事は既にしていないのですが、売上単店日本一のためMDまで他店への影響力があるとは思います。伊勢丹新宿店MD力でできたとしても、同様に他店を力で合わせると間違う元なのです。他店は普通の百貨店なのですから、三越伊勢丹にはこのような状況下で、お客様本位の百貨店として、お客様、従業員、取引先、株主、役員のために頑張って頂きたいものです。

 

現在の企業で売上不振の原因をどう見るか?他者(天候や気温、震災等)要因にするか?自者要因とし、自分で出来る事を見つけ精度を高めるようにするかで、全く異なるのです。

上記以外にも多々あるとは思いますが、「あるある」と同調されても、その後自社は自分はと振り返ってみてください。果たして、、、

 

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。

弊社へのご連絡は、HOME-PAGEのお問合わせより、お願いします。

 

追1)三越伊勢丹は本年4月より基幹3店ではなく、本店2店(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店)のみ、MD統括部(商品仕入∔販売)の傘下となり、三越銀座店は従来通りに残し、立川店や浦和店と同じ支店扱いで並列にしています。

管理体系が変わり、どのように三越銀座店は変貌するのでしょうか?楽しみです。要は基幹3店という言葉は消え、基幹2店のようです。(本年と昨年の組織図の比較にて)

追2先日の今期決算の下方修正の発表に対するマスコミも、110億円の赤字と流布されていましたが、実態は2020年2月期の営業利益は155億円の黒字です。前年の300億円弱に対しほぼ半減、今期目標の200億円に対し、75%程度ですが、3月度を含む第4四半期が苦しいのです。

経営方針に異論のある幹部が自社を悪く見せる表現をマスコミに流し、それを鵜呑みにしているマスコミの聴き取り方と確認もしないでの表現が悪いのでしょう。3月期決算のため、コロナによる3月の大幅減が響いているのです。今年中に収束すれば、今期は2月決算企業の方が厳しいでしょう。

このような事例は三越日本橋店にビックカメラが入ると決まった時のマスコミの表現(ビッグの高級家電の展開なのに、ビッグの名前だけで安いモノと勘違いしての記載)も同様でした。本質を見抜けないマスコミやそれに踊らされる一般人はスルーすべきでしょう。

追3)先週の「服の基本2」の補足説明として、2つ釦を2つとも掛ける事がNGの理由は、上着を上前(左)と下前(右)を重ねてみると判るのですが、2つ釦の上の釦位置が頂点になっており、この釦のみ掛けるように出来ているのです。下の釦を掛けるとシルエットが崩れてしまうのです。

3つ釦段返りの真ん中の釦も同様で真ん中の釦のみ掛けるべきであり、3つ釦上2つ掛けの場合は上前と下前を合わせると上と中の釦位置が2つとも並行で頂点になっているのです。

このように設計されているので、2つ釦ジャケットは上の釦のみ掛ける事が正しいのです。計算された美しいフォルムを意識した型紙による紳士服の上着のシルエットを無視すれば構いませんが、供給側のプロはここまで意識されているので、素人は知らずに着ても「何かおかしい」ではなく、それなりに見えるのです。これが服の基本の素晴らしい点なのです。一例ですが、

ユニクロのハンガー納品はハンガーから落ちないように2つとも釦止めしていますが、本来はこれもNGなのです。人間の体は上から見て平面ではなく楕円形のため、釦止めをすると上前(左)と下前(右)の釦を止める事により、前合わせが重なり、釦止めにて皺が出来るのです。そのため皺にならない合繊を多用している事もあるのですが、綿100%や綿麻混ではやはり皺にはなるのです。

本来は肩に厚みのあるハンガーを使い、釦を外してポリ袋を被せてハンガー納品すると輸送中にハンガーから滑り落ちる事が殆どないのです。しかし店の倉庫に納品後売り場の品出しする際に、ポリ袋を外す作業が増えるために、ポリ袋を付けていないケースも多いのです。結果釦止めにて売り場迄品出しされ、販売員が釦を外す作業軽減のため、売場のジャケットは釦を外してはいないのです。作業効率最優先の考え方なのです。

ユニクロのウェアに対する考え方(コンセプト)や素材・商品開発は素晴らしいのですが、このように服を考えているところが小職との違いなのです。小職は価格で商品を買う買わないをきめているのではなく、価値が価格を上回っているものを評価しているのです。勿論ユニクロの商品も持っていますが、最近では昨冬の肩からずり落ちにくいヘルメットバッグを4色購入し、カジュアル服でのリサーチ時に利用して重宝しています。小職は百貨店顧客ですが、