小島 健輔

2019 14 May

C&CでEC統計が怪しくなって来た

          

 毎年、経済産業省が発表しているEC統計(電子商取引に関する市場調査)の18年度版の発表が未だないが(17年度版は4月25日に公表された)、前回17年度版の衣料・服飾雑貨EC売上の伸び率7.6%、EC比率11.54%という数値も業界の実態と乖離(特に伸び率)した感を否めなかった。
 統計数値が怪しくなって来た要因はC&C(クリック&コレクト)が急速に広がりだしたことで、ECで注文しても「店受け取り」した場合、「店在庫を引き当てて倉庫に戻し出荷」した場合、「店在庫を引き当てて店から出荷」した場合を、EC売上に計上するか店舗売上に計上するかで数字が大きく変わってしまう。米国では衣料品・服飾品のEC比率が18〜28%と各調査で大きな差があるが、集計方法もともかく、小売チェーン各社の決算報告書にもEC売上の明細は記されておらず、実態は掴めないのが実情と思われる。
 アマゾンなどECプラットフォーマーの売上にしても、そのまま集計してしまうと実態と大きく乖離してしまう。売上イコールEC売上ではないからだ。アマゾンのAWS(クラウドサーバ)事業などEC以外の売上を除外するのはもちろんだが、ECにも全額が売上となる直販事業と手数料が売上になるマーケットプレイス事業がある。
 アマゾンの18年12月期の場合、AWS事業を除く売上は2072.3億ドルだが、直販EC売上1229.9億ドルに平均的な手数料率から推計したマーケットプレイス取扱高を加えた総EC取扱高は3509.6億ドルになる。その68.2%の2393.5億ドルが米国でのEC売上となるが、各調査がこの数値を反映しているとは思えない。
     
Digital sales are online sales and digitally assisted store sales which include Buy Online, Pick Up in Store (“BOPUS”), Ship to Store, Reserve Online, Try in Store (Store Reserve) and Style Board, a digital selling tool.
     

 そんなこんなで不信感が極まる中、ノードストロムの19年1月期アニュアルレポートを精査していたら、EC売上に関わる注目すべき記載が出て来た。EC比率は30%(46.4億ドル/約5100億円)と明記しているが、それに該当するものとして「online sales」に加えて「Buy Online」(ネットで買って)「Pick Up in Store」(店舗在庫商品から店受け取り)、「Ship to Store」(倉庫から出荷した商品を店受け取り)、あるいは「Reserve Online」(ネットで確保して)「Try in Store」(店舗でお試し)、「Style Board」(パーソナル・スタイリスト・サービスのチャットアプリによる売上で、お試しサロン「Nordstrom Local」に取り寄せた売上も含む)を列記していた。
 C&Cサービスが多様化する中、もはや店舗売上とEC売上を分けるのは非現実的で、統計的にも無理があると思われる。商業施設デベのテナント売上に対する課金も店舗とECを隔てず同率にすべきで、三井不動産「&モール」の先進性が評価される。

※私の英語読解力は怪しいので、もしも誤った解釈をしていたらご指摘ください。
     
     
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