北村 禎宏

2019 05 Oct

蓋が開いたが

 10月になって、買い慣れたいつもの品物が10円20円高くなり、行き慣れた区間の運賃が10円上がっていることには一瞬「そうか!」とハッとさせられる。飲食店で混乱に巻き込まれたこともいまだなく、ポイント還元には何の興味関心もなく、駆け込み需要に走ったわけでもない私にとっては静かに10%の世界がスタートした。

 50万円や100万円の大口需要者にとっては2%は決して小さくはない額になるが、ガソリンを含めて消耗品的日用品を駆け込む庶民の財布事情について政府や別次元の世界で経営トップに君臨している人々にどこまで感知されているのだろうか。200年ほどの月日を飛び越えてまさか江戸の風景が蘇るとは…。

 これまでほど大きな駆け込み需要には至らなかったとの報道であるが、アパレルにとっては重衣料がどれほど先取り購買されたのか気になるところだ。おりしも8月並みに暑さに見舞われたことから、消費者にどこまで手を出してもらえたのか。また、実需期にどのような影響を与えるのか。

 10%の水準になるまでに30年を要したが、今後は30年を待たずして20%に突入する確率が決して低くはないと考えられる。それ以前に、人口動態が激変しつつある社会においてベーシックインカムも含めて税制のスキームを抜本的に考え直す必要に迫られることも容易に想像される。

 単なる私事に過ぎないが、お盆以降一か月を超えて脊柱管狭窄症が激甚をもたらし、ここ二週間は効かせすぎのクーラーに喉をやられて四苦八苦したおよそ二か月であった。3/11以降の世間の風はどこにいったことやら。メディアは熱中症に備えてクーラーの利用をあおり、夏場は25度との張り紙がなされている会場の温度設定が平気で22度になっていたり。交通機関では弱冷車に乗車してもなお上着が必要だったり。

 ちょっとこの国は病んでいるなと、それを助長しているのは刺激反応型のメディアにも大きな責任があるなと。自分の考えをもって、自分で判断しながら行動することが求められるが、そうでない刺激反応型の人々が環境を制御していることから自分ではどうにもならないことが少なくないジレンマを感じているのは私だけではないだろう。16歳の少女の叫びは痛いほどよくわかる。