北村 禎宏

2019 07 Oct

四段階の空白

 駅前のそごうが阪急百貨店に代わって三宮周辺の景色が変化した。MINT神戸が登場したときも大きな変化を感じたが、果たして三宮周辺に消費者、特に買い回り品の需要を呼び込むことができるかどうか。阪急としてはハーバーランドで味わった苦渋のリベンジなるか、そして現在進行中の三ノ宮駅周辺再開発の切り込み隊長となれるかどうかが問われている。

 同じくしてオンワードが600店舗の閉鎖を発表した。ワールドとTSIが大量退店したのは三年前のこと。百貨店のビジネスモデルもSCのビジネスモデルもはるか昔にターンオーバーしているが、大きな組織が舵を切って方向を変えるには膨大なタイムラグが発生してしまう。MJでは「空白の10年」とあるが、わが国には空白の20年もあれば、30年も40年も存在する。

 40年の空白とは、バブルに浮かれて米国企業の本気逆転モードを読み取ることができず、逆に米国企業に日本企業の勝ちパターンを読み取られてしまったことに始まる。30年前バブルがはじけた後、大きな修正を必要とされるビジネスモデルがあっただろうに、駅ビルとSCの急激な発展がそのことを見えにくくしてしまった。

 20年前、ネット通販の出現に、そもそも高級ファッションブランドが通販でうれるわけがない、通販なんかで扱われているとブランドイメージが損なわれてしまう、有店舗の売上が食われてしまうなどと高を括ったり逃げに走ったのが当時の多くの業界関係だ。その後アウトサイダーのZOZOが大きな旋風を巻き起こすに至るが、結果的には返ってマーケットが荒らされることになってしまった。

 およそ10年前にリーマンショックが追い打ちをかけたが、直近の10年間の市場構造の不連続の変化は記憶に新しい。象徴的にはメルカリの台頭だ。ネットを介していつでもどこでも誰もが情報を入手できて発信でき、なおかつ様々なプレーヤーとして市場に参画することが可能となった今、
ビジネスモデルというB側からの目線で議論している場合ではない。マーケットストラクチャーの変化と、それに伴うコンシューマーモデルの変化をとらえることができなければ、B側は退場をやむなくされることになろう。

 ところで、阪神梅田と阪急梅田が大阪梅田に改名された。インバウンドの人々にとっては、ウメダって何?どこ?だろうから妥当な措置だ。翻って、神戸のターミナルが三宮であることは、日本人も含めてどれくらい知られているのだろうか。間違えてJRの神戸駅に降り立ってしまった旅行者はいないのだろうか?

 しかも、私鉄と市営地下鉄が「三宮」でJRでは「三ノ宮」となるので、アプリへのインプットがややこしいことこの上ない。ローマ字入力は同じなので海外の人々にはストレスはないのだろうか?ようわからん。いっそのこと、すべてを「神戸三宮」に統一すれば、いろんなことが丸く収まる。