北村 禎宏
選手交代
米中貿易摩擦が世界経済および政治の台風の目となっている。半世紀前には日中繊維摩擦が、その後、日米自動車摩擦が、そして日米半導体摩擦80年代後半の出来事であった。この間のおよそ50年にわたる米国のしたたかさについては、「日本の経営を創る(伊丹敬之/三枝匡)」が詳しい。
失われた10年があれよあれよと20年になり30年になろうとしている今、日本は本割りの土俵に上がることすら叶わないようだ。2020年と2025年のラストチャンスをあだ花で終わらせることなく、世界に対してその存在意義と個性をアピールしていくことが、国レベルでも産業レベルでも企業レベルでも強く求められている。超高齢化社会の下、観光立国として類い希なるサービスの質を梃子にどのようなアイデンティティを示しうるのか。
中華圏における需要減速がアップルの二桁下方修正を強いるほど、その影響力は大きいとともに陰りが生じつつあることを受け入れなければならない。月の裏側に着陸しうる科学力を手にした今、今度はその正しい使い方が問われている。
成長と規模ではなく維持と質の時代が訪れつつあることは、LOHASやサステナビリティなどの概念で10年以上も前から認識はされているはずだ。自分だけ経済的に得をしてやろうと、国が、企業が、個人が考えたときに、そこには正常性バイアスの罠が待ち構えている。
平成が終わろうとしている今、私たちが真剣に取りくまなければならないことは、ここ半世紀以上続いた経済成長との決別をどのように果たしていくのかということに尽きる。食うに困らなくなったことは有り難い限りであるが、その分生きるに困るような時代になろうとは。
これまで同世代のお二人から年賀状を最後にする旨のご挨拶を頂戴したが、私も昨年から年賀状を廃止させていただいた。一言もなく誠に勝手な一方的辞退であったので、関係各位の方々にはこの場を借りてお詫びとお知らせ申し上げる次第だ。