北村 禎宏

2019 22 Jul

ヤフーとアスクル

 ヤフーとアスクルがせめぎ合っている。資本提携して数年が経過するが、双方の思惑が交錯する。戦術面での様々な綱引きもあろうが、戦略面で両社に共通している経営課題はかなりヘビーなものがある。

 ヤフーは世界レベルではグーグルにしてやられて、日本ほど健闘できている国は希少だ。我が国でポータルサイトの黎明期に数ある競合から頭一つ抜け出したヤフーは、その後ソフトバンクの後押しなどもあって一定の地位を獲得するにいたった。あれよあれよという間にエクスプローラーにとって代わられてしまったネットスケープのような運命をたどることなく、ここまで躍進した。

 ただし日本という空間で一定の時間経過の中での限られた事象に過ぎない。開かれた時空における世界競争になるとGAFAの大きな足音に脅かされかねない。

 アスクルはちょうどMBAを修学しているころに創業されたので、当時の経営学においてもさかんに議論の対象になったビジネスモデルだ。本業のど真ん中ではイノベーションは発生しにくいと言われるが、業界の勝ち組からもそれは生まれにくい。プラスというマイナーメーカーだからこその新規事業だった。コクヨがカウネットで後を追いかけるが、アスクルは先行逃げ切ることに成功した。しかしながら以降は楽天が、アマゾンが、その他もろもろにECサイトが、明日来るどころか
今日来る時代を呼び込んだ。これもわが国のその時代の文具業界という閉じた時空において躍進したクローズドなビジネスモデルだった可能性が高い。

 オープンな時空で苛烈な競争にさらされたとき、GAFAやBATにとって代わられる、もしくはまだ見ぬ代替プレーヤーがどこからともなく突然現れるかもしれない。

 それぞれが緩い連携レベルでもたもたしている場合ではないというのがヤフー側の見立てで、過去の成功体験を手放すことが困難なのがアスクル側のジレンマと考えられる。より大きな土俵でオープンな戦いを展開するには両社ががっぷり四つに組んでも、世界にはもっと上がいる。