船橋 芳信

2018 26 Apr

食と物作り!

先日、日本出張から戻った。日本の物作りの質の高さに、今回の出張でつくづくと知らされたことがあった。

食に関してである。市場ではファーストファッション、ファーストフ−ドのオンパレードである。

日本橋にあるコレードは、ファッションフードのビルディィング、和、洋、中華、エスニック、インド、アラブ、

あらゆる国々の食事に出会うことが出来る。物作りに従事する身にとっては、気になる事が沢山ある。

この料理は、何処で作られているのだろうか?工場で作った料理を、運び込んで只温めて出してるだけでは?と言う疑問が生じる。

ファッションフードのビル中に、ひしめき合うレストランでは、微妙な繊細な味には、出会えない。

先ず、不可能な事だ。一件ファッションフードのビルの中のレストランは、雰囲気、清潔さ、スマートさ、

食を堪能させる要素には力が入れられているが、肝心の料理そのものには、手抜きの味を感じてしまう。

料理は、其の味への思い入れ、料理人の心意気、食に対する崇拝の信念、料理への精進が、器の中の料理に表現されてくる。

どのお店の料理の何処に、料理人の精神が宿っているだろうか?

 長崎に一件の料理屋がある。ここの主人は、終活、人生最後の活動として、これまで作ってきた料理をビデオに撮って、

YOU TUBEに載せている。このアクセスが、既に百万件を越え、最後の活動はどうやら楽しみをも生んでいるようだ。

何が凄いのかと言うと、普通の事を普通のように徹底して、料理している。手を抜かない料理は、

はるかヨーロッパ、スペイン、ポルトガルから、近隣では中国、シンガポール、韓国とYOU TUBE のVIDEOに魅かれて

此処長崎まで、彼の料理を食べにくる。先日、カウンターで相席していた中国人の若者が、今日のエビはこの前のエビに比べて

甘くて美味しい。どうしてこんなに違うのかと問い質している。今日のは沖縄の海で捕れたエビ、前回のは五島のエビ、季節に依っても

取れた場所でも、味は変わる。それが当たり前だ、と答えている。

 ファッションフードのお店で、こんな会話は成り立たない。普通ではない事を、当たり前、いやそれ以上に飾り付けた

料理に、食べる我々もそうした物として容認して、受け取っている。こうした無許容の胃袋には、ごちゃごちゃ粉飾食材で

腸の中はさぞかし、賑やかな事だろうか。

 この長崎の料理屋のように、未だ未だ日本中に点在する手を抜かない精神の物作りが、点火され、

世界に発信されるのが待ち望ましい。