上野 君子

2022 21 Nov

入院中の服装について

人生初の入院を経験した。
白内障手術のためで、この入院は2,3カ月前から計画していた。
たかが「白内障」かもしれないが、私が通院している眼科の基本的ルールに従うと最低1週間の入院が必要になるからで、副業アルバイトで喰いつないでいる身からすると、効率的にスケジュールを立てるのは結構大変なのである。

両親も同じ眼科にお世話になっていて、20年近く前の母の入院時には館内見学もしていたので、このクリニックの特別感は知っていたが、実際に体験してみると、食事の良さやホテル並みの部屋、看護師さんたちのきめ細やかさなど、本当にスペシャルであることを痛感した(ただ、肝心の眼については想定していなかったこともあるが、それはまた別の機会に)。

こぢんまりとした家庭的な病院だけに、同じ時期に入院していた人たちや看護師さんたちとの様子も書きたいことはいろいろあるが、ここではそれはいったん置いておいて、私が書くべきと思われること、つまり病院で過ごす時のウエアについて書きたいと思う。

通常の病院とちがって、このクリニックには寝間着などのレンタルも院内の売店もなく、病院内で過ごす服などは全部自分で用意しておかなければならない。手術時だけは手術着なる薄手のガウンのようなものを上に着せられるが、それ以外は私物だ。
これはいい機会と思って、手持ちの部屋着やラウンジウエア、リラックスウエアなどから、インナーウエアも含めて、私は病院で過ごす1週間にふさわしいと思われるものをいくつかピックアップした。

病院の生活というものは、ベッドに寝ていることを基本にしながらも、重症でなければ病院内を歩きまわる時間も少なくない。特にこのクリニックは、食堂での食事は入院患者中心だが、朝食後の診察などでは外来患者と一緒になる機会もあるし、ある程度、きちんと感というか、他者に見られる意識も必要である。

周りの入院患者さんたちがどのような服装でいるか観察すると、これが思った以上にラフだった。
従来のようなパジャマ(その上に羽織り物)を着ているのはごく限られた年配者だけで、多くはスウェット系やカジュアルなセーター&パンツ。しかも驚くことに、ほとんど着替える様子が見られない。昼も夜も同じ。
同室のある70代女性は入院2週間目に入っていたらしいが、一度も着替えることなく、常に同じマスタード色のセーターと黒っぽいパンツをはき、そのまま少ない荷物で退院していった。
もう一人の50代女性(経営者)は、暑がりということで、いつもひざ丈半袖カットソーワンピースだった。
思い返してみると、母の入院時はパジャマの上にキルティングのロングガウンのような、いかにもナイトウエアといったものを着て過ごしていた記憶があるが、そんな恰好の人は誰もいない。この10年程の間に、世代に関係なく人々の服装のカジュアル化が進んだと感じる。スーパーなどで80代老女を見ても、たいていがスニーカーにリュックを背負っている。

もともと家でも、寝る前入浴後の就寝時、朝ベッドから起きた後、外出時と、着替えることが当たり前の私は、入院中も最低限、ベッドでの就寝時と日中は着替えたいと思って実践していた。寝ていた服装のままで日中を過ごすことに抵抗がある。極力荷物は少なくと思い、日中はほとんど着た切り雀(下着はもちろん毎日変えます)で通していたが、それでも荷物が多く、ベッド周りにあふれていた。
相部屋だったが、部屋にはロッカー室にカーテンで仕切れるようになっていたので、人目を気にせずに体を拭いたり着替えをすることができた。

私が日中着ていたものをいくつか紹介しよう。
・厚手オーガニックコットンニットの長袖ワンピース×厚手レギンス&ソックス×ロングニットカーディガン
・タートルネックニットセーター×スウェットパンツ×パーカあるいはダウンベスト

また、ブラジャーについては寝る時はつけないが、日中は(手術中も)ソフトタイプや軽いブラ付きキャミなどはつけていた。ショーツや肌着も肌ざわりのよいものを選んだ。寒い時にちょっと肩にかけるショールや、ニット帽(洗髪できない髪や化粧していない眉を隠す役割も)など小物も重宝した。
もちろん、もっと最低限の持ち物でシンプルに過ごす方法もあるが、1週間とはいえ、私にとってはこれが快適に過ごすために適度だったと思う。