上野 君子

2019 25 Mar

祖母の形見にこめられたもの

先日、好きな物を集めて飾ってあるキャビネットを掃除していた時、改めて祖母の形見を手に取ってみた。

明治32年生まれの祖母が亡くなったのは、私の19歳の時。それから40年以上も経つが、いまだに祖母を想うことは少なくない。

ここに入っている祖母の形見とは、母と一緒に暮らすようになった数年前に、古い着物専用の桐タンスを処分するに当たって出てきたもので、私が子供の時には見たこともなかったものたち。おそらくタンスの奥に100年近く仕舞われていたものだ。

 

まず漆の小箱に入っていたのは、琴の爪。

祖母が琴を弾いていたのはおそらく女学校時代だろうから、明治末期から大正初期にかけてのもの。そおっとはめてみると祖母の指が感じられる(そう思ったが、やめてみた)。

 

次に、水晶の数珠。

祖母は禅宗の教育は受けていたが、仏教のしきたりに忠実という印象はないから、これはほとんど使用していないと思われる。まったく手あかが感じられない美しさ。

水晶はお守りのストーンだから、私は箱から出して、人形の首にネックレスのようにかけてある。

 

そして、お祝い事に欠かせない寿の文字が染め上げられた絞りの袱紗。

30年以上前でもこういう袱紗は骨董店で高値で売られていたが、見事な手仕事の美しい布である。四隅の緑もいい。

 

できれば、祖母の存命中にそれぞれの物に込められた思い出を、祖母から聞きたかったとつくづく思う。