上野 君子
パーティ苦手意識を返上しなければ
プライベートな友人たちは、私のことを社交的でオープンマインド(?)な人だと思っているらしいのだが、もともとの性格はその真逆にある。
小学生の頃の通信簿には「引っ込み思案」という言葉をよく書かれていた記憶がある。30代、40代という活動期を過ぎて50代以降、本来の人見知りの性格がますますもどってきた。
世の中、パーティ好きな人と苦手な人の両極がいるが、私は明らかに後者である。この辺の感覚は理屈ではない。その人の資質の問題である。
ファッション業界というのは、ある意味、パーティで成り立っているところがあって(日本以上に海外はもっと)、その中で仕事をしていくには必須の条件であるといっていいだろう。
例えば、コレクションのショーなどで最前列に座ることにこだわる人は、多くがパーティ好きといっていいだろう。私はなるべく後ろの方で隠れていたい方だ。そもそも座席で格付けされるような価値観に違和感を覚える。
都心を離れて8年経つ私は、何が変わったかというと、主に夕方から夜にかけて開かれるレセプション(新ブランドのお披露目など)などのパーティに行く機会が激減した。よほどのことがない限り、わざわざ一つのレセプションのために、往復交通費をかけて参加することは考えられない。
そうしていろいろなご案内状をパスしているうちに、ファッション業界には非常にうとくなってしまった。
ファッション業界というのはいい意味でのミーハー精神がなければだめというのはわかっていても、それは都会ならではのライフスタイルという気もする。
そんな私が久々に出かけたレセプションが、サザビーリーグのEC限定ジュエリーブランド「ARTIDA OUD」。SNSなどによる拡販を狙ったビジュアルな演出などよく考えられていて、刺激になった。それ以上に、今のニーズや売れ筋をうまくついている。
この日はファッション業界大御所の出版パーティが他であったために、昔からの業界人はそちらの方に行ったこともあり、あまり知人がいないことも気楽だった(そちらからもご案内いただいていたが、会費が身分不相応だったこともあり、失礼してしまった。申し訳ありません!)。親しい人ならいいが、顔は昔から知っているという距離感の人が集まる場所というのが一番ストレスフル。ジュエリーの方はほとんど知らない人ばかりだったが(明らかに業界も世代交代している)、数少ない知人との会話は私にとって非常に刺激になった。
最近のファッション業界は、ブランドが多すぎて何が何だか分からない(しかもクオリティはそこそこ高い)、カオス状態なのではないかという私の問いに対し、その人が返してくれたのは「供給過剰」という言葉。
モノを作りたい人はたくさんいるが、人々のファッション消費は切り詰められているから、なかなか商売にはならないというわけだ。
こういうホンネの話は実際に対面しないと出てこないものだ。
パーティというのは人と人が会って、話をする場。
パーティ苦手意識を返上して、私もできるだけフットワークの軽い人間にならなければと反省した。