上野 君子

2019 05 Sep

こだわりはある今風の和食の店なのだが

ヨーロッパから出張でやってきた友人と一緒に、鎌倉に食事をしに行った。

鎌倉は私にとってはあまりなじみのある所ではないのだが、その日の都合でお互いの中間地点で会えるようにと考え、友人がまた行ったことのない鎌倉を選んだのだ。

舌も肥えている友人のこと、情報収集した上でこじんまりとした雰囲気のある和食割烹の店に予約を入れた。

 

電話で予約した時の感じと少し違って、特に紹介者もいない一元さんだったせいか、なんとなく最初から居心地がよくなかった。外国人連れの客だったので、緊張したのかもしれないが。

まず、料理のコースはお任せなのだが、店からは料理の内容を説明するわけでもなく、こちらの好みを聞くわけでもない。

だまって出てくるものをいただいていたのだが、次第にカウンターに座っている周りのお客に出されるものが少しずつ違うことに気が付いた。その理由は後になってわかった。

リピーターのお客さんに対してはそれぞれの好みなどを把握しているということ、そして外国人には頭のついた魚は嫌いだろうから別のものにしたということだった(これこそ勝手な思い込みというもの。外国人をひとからげにするなんて!)

 

たまたまカウンターの隣りに座ったご夫婦(恵比寿から車を走らせて時々来るという、いかにも富裕層のご高齢のお二人)が英語堪能で、話がはずんだことによって、その人を介して店の主人もこちらにやっとなごんだ態度を見せるようになった。

これは英語力の問題ではない。おもてなしの気持ちがあるかどうか、コミュニケーション力の問題だ。

 

そして、魔の会計。「現金払いのみ」という予感が当たった。

2人で飲んで食べて2万円以上は軽くかかる店が、なぜクレジットカード払い不可なのだろうか。このキャッシュレスの時代に!

東京はこういう店は少なくなったと思うが、郊外に来ると、この手の店が少なくない。

カードに慣れている友人は、以前は驚いていたが、最近では日本の習慣にあまり驚かなくなったようだ。

だいたい会計の内容も不明解である。お任せコースは6000円位だったはずだが、サービス料や税金やらの上乗せ分がどの位なのか、明細が出てこない。

手ごろな居酒屋でも、「お通し」という日本独自の習慣が外国人から嫌われているようだ。

 

この日こそご馳走になろうと調子いいことを考えていた私は、財布の中から1万円を出すはめに。割り勘ということで平和にディナーが終わった。

この店にはたぶん二度と行かないだろう。

 

 

最初の一皿