宮田 理江

2019 18 Jan

『女王陛下のお気に入り』、宮廷ファッションも見どころ 英国服飾文化の源流に触れる

映画賞レースが本格化してきました。既にゴールデングローブ賞が発表され、最高峰のアカデミー賞も2019年2月25日に控えています。ゴールデングローブ賞で作品賞や助演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされ、オリヴィア・コールマンが主演女優賞に輝いた『女王陛下のお気に入り』は主要部門でのノミネート、受賞が有力視されています。

『女王陛下のお気に入り』は18世紀初頭のイングランドが舞台。フランスと戦争を続けていた当時のアン女王(オリヴィア・コールマン)が主(あるじ)だった宮殿で、女王を巡って争う2人の女性の駆け引きを描いています。

 

『ラ・ラ・ランド』に主演したエマ・ストーンが演じたのは、いったんは貴族階級から落ちたものの、返り咲きを狙う、召使いのアビゲイル。一方、アン女王の幼なじみである、モールバラ公爵夫人のサラ(レイチェル・ワイズ)は宮殿を取り仕切る権力を握っています。サラの親戚として宮殿に入り込んだアビゲイルは徐々に女王に近づき、サラに取って代わろうと企みます。

映画の見どころは、女王を振り向かせようと競い合うサラとアビゲイルが繰り広げる「女の戦い」。華麗な宮中生活を題材としているだけに、豪奢なコスチューム(衣装)にも注目です。

英国調のテーラリングに象徴される、正統派の仕立てカルチャーは2019年春夏シーズンの新トレンドとして盛り上がってきつつあります。そうした英国流服飾文化の源流に触れるような体験も味わえます。

衣装デザインを担当したのはベテランのサンディ・パウエル氏です。『恋におちたシェイクスピア』や『アビエイター』『ベルベット・ゴールドマイン』などで、アカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされていて、受賞も重ねています。今回も当時の王宮に集った貴族や貴婦人たちの装いを見事に再現。登場人物のキャラクター表現に深みをもたらしました。

 

女王の気を引いて、次第に地位を高めていくアビゲイルの野心は、華やかさを増していく、彼女の服装にも表れています。鳥撃ちシーンでサラが見せる、マニッシュな射撃ルックには貴族趣味や支配的キャラクターが読み取れます。女王の装いにも不安定でわがままな内面が映し出されています。

歴史的なコスチュームが評価を受けやすいアカデミー賞では、『女王陛下のお気に入り』の受賞が期待されるでしょう。主演と助演の女優3人がいくつのオスカーを獲得できるかにも関心が集まりそうです。

大筋は実話であり、リアリティーが高く、歴史のドラマに身をゆだねるような感覚でストーリーを楽しむことができます。サラの家系からは後にチャーチル首相やダイアナ英皇太子妃も生まれていて、歴史の奥行きを感じられる作品です。スカートを膨らませるパニエや、ウエストを締め付けるコルセットなど、当時ならではの服飾文化があちこちに盛り込まれていて、ファッション史の面からも興味深い作品に仕上がっています。

 

 

2月15日(金) 全国ロードショー
女王陛下のお気に入り
2018年/アイルランド・アメリカ・イギリス映画
配給:20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox

 

Written By Rie Miyata

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