宮田 理江

2021 05 Jun

ユニクロ「LifeWear」2021-22年秋冬コレクション・展示会リポート 穏やかな「自分時間」に誘う、親しげで心地よい装い

「UNIQLO(ユニクロ)」の2021-22年秋冬展示会が開催されました。ようやくコロナ禍の出口が見え始める中、ユニクロがフォーカスしたのは「コミュニティ」です。「My Neighborhood」というテーマを掲げて、「大切なのは、周囲の環境や住んでいる地域に意識をむけていくこと」と位置づけました。

移動や外出が制限される体験を経て、私たちの行動半径は狭まりましたが、同時に家族や地元との向き合い方も変わりました。そうした丁寧で落ち着いた暮らしを続けていくうえでは、服にも新たなたたずまいやデザインが望まれます。人類が初めて迎える「アフターコロナ」を見据えた新シーズンの「LifeWear」はこれまで以上に心理的な親密さや機能面での心地よさを提案しているようです。

 

◆FREEDOM IN MOTION(街と自然とのスムーズな往来)

街と自然どちらにもなじむ装いを打ち出しています。シンボル的なツールとして自転車やキックボードが置かれていることからも分かる通り、プライベートで手軽な行き来のイメージ。装いに関しても、伸びやかでくつろいだ気分が寄り添っています。

ニット帽やライトアウターなど、小気味よい移動にふさわしいアイテムが用意されました。ナチュラル系の色やニットの風合いも、気持ちをほどくかのようです。体を締め付けないシルエット、デイリーにまといやすい使い勝手などが服の出番を増やします。どこか懐かしげな表情も心地よさを高めてくれそう。

ウィメンズではダウンアウターやニットが主役的な存在に据えられています。.カラートーンはナチュラルで柔和な雰囲気。周りの人たちとやさしい気持ちで触れあえそうな色味です。

のどかなシルエットが「着るくつろぎ」をもたらすかのよう。ニット素材の磨き上げにもいっそうの工夫が凝らされています。1枚で着ても様になる点で「ドレスニット」とも呼べそうな、手の込んだこしらえ。襟周りや裾などのディテールにも、適度な主張が盛り込まれていて、「どこか違う」と感じさせる造りです。

ウィメンズのウルトラライトダウンは、通常のウルトラライトダウンよりも細い糸を使用。着心地が柔らかく、肌触りがアップしたジャケットとコートが登場します。丸みを帯びた菱形キルティングは、どこかレトロな表情。ジャケットが折りたたんで持ち運べるポケッタブルなのは驚き。ゆとりのあるシルエットです。メンズでも3Dカットやウェーブキルトなど、機能とデザイン性を兼ね備えたタイプがさらに進化します。

ウィメンズのジーンズは全体的にハイライズ化。脚がさらに「すっきり見え」しています。トップスの裾をウエストインしやすそう。程々のダメージ加工はアクティブ感を添えます。スキニー、ペグトップ、フレアなどを用意。世界が認めるカイハラと組んで開発した極上デニムはさすがのソフトな肌当たり。好みのシルエットで着こなしやすい選択肢の広さです。

メンズのユーティリティワークパンツはワークテイストのイージーパンツ。カジュアルなイメージがありますが、こちらはシーンを選ばずに穿きやすい、名前の通りに使い勝手のよいアイテム。ストレッチドビーとコーデュロイの2種類が用意されています。

 

◆NEED FOR NATURE(自然とともに生きる)

以前から人気のあったアウトドアは、コロナ禍以降、ソーシャルディスタンスを保ちやすい点も支持を集める理由に。ハイキングやキャンプ向きのユーティリティウエアにもニーズが広がってきました。今回はそうした日常着の延長のような「アウトドア寄り」のアイテムがいくつも提案されています。

帽子やスニーカー、パフィシューズなど、アウトドアで気持ちを弾ませるようなアイテムが用意されました。もちろん、街中でも便利な「出番フリー」なタイプです。ポケッタブルコートはたたんでバッグにしまえる重宝アウター。蒸れにくいショートコートも使いやすそうです。

秋冬に加え、春先も頼もしいヒートテックインナー。細くしなやかな繊維が着用感を高めました。ウィメンズではドライ機能が追加。蒸れにくい素材だから、快適に過ごせます。

ウィメンズではスウェットスリットプルオーバーが登場。ふっくら素材が生み出す、ボリュームのあるシルエットや柔和な表情です。両脇にはサイドスリットが施されていて、着こなしアレンジが多彩です。

メンズではオーバーサイズシルエットのシャツがいかにも着心地よさげ。ライトアウターとして羽織れる、使い勝手に優れたアイテムです。ふかふかのルームシューズも登場します。

 

◆CURATED CITY LIVING(都市生活者の流儀)

無駄を遠ざける、合理的なライフスタイルに応える提案も用意されました。ユニクロが得意とする機能性やシンプルさが生きるテイスト。タイムレスに着続けやすい点でサステナビリティー意識にも通じるとらえ方です。

軽やかな着心地のスフレヤーンニットは、通常デザインと3Dデザインでメンズに登場。ウィメンズにはさらにやわらかく進化したスフレヤーンスムースが用意されました。3Dニットのセーターは、やさしくくるまれるような着心地。ニットならではのやわらかい風合いに気持ちもほどけます。

チュニック丈のロングシャツ(ウィメンズ)は、自在に着回しやすいアイテムです。シーズンを問わずに着られるウエアが多かったのも、今回の展示会の傾向でした。アーバンな雰囲気で着こなしやすいアイテムが数多く提案されました。クールでスタイリッシュなウエアは、お仕事ルックでの取り入れやすさも魅力です。

シューズではモード感あるチャンキーヒールのシューズやサイドゴアブーツ、ジップショートブーツがお目見え。靴への力の入れ方は今回の展示会で目立っていました。スエードタッチのスニーカーは性別を問わないユニセックス仕様です。

バッグはレザー調のスタイリッシュなトートバッグをはじめ、デザインのラインナップがいっそう充実。ミニバッグも扱いやすく工夫されています。

 

◆REST & RECHARGE(休息と充電)

「休息と充電」を意味するこのメッセージは、おうち時間が長くなった今、重みを増しています。自宅で過ごす時間が長くなった結果、プライベート感やリラックス気分がいっそう大事になってきました。穏やかな眠りをサポートしてもらえる服の意味が大きくなったこともあり、今回の展示会ではこうしたアイテムが一段と充実していました。

ウィメンズのサテンドレープストレートパンツは、室内でもプラウドな気持ちを保ちやすい、スタイリッシュなルームウエア。上品な光沢がおうちコーデを格上げしてくれそうです。

フランネル生地で仕立てたワンピースは、大人感の高さと落ち着いた雰囲気が同居。フロントを開けて、羽織り物としても着やすいフォルム。ウエスト周りにタックが施されていて、シルエットに適度なめりはりが利いています。

ヒートテック寝具は毛足が従来よりも長くなりました。肌触りのなめらかさを実感できるのは、眠りに導いてくれる毛布でしょう。自然な寝落ちに誘われそう。敷パッドはセミダブルからキングまで、サイズのバリエーションが広がっています。枕カバーの登場もうれしいニュースです。

家で履く人が増えてきたルームシューズはニットとウールライク素材で、足元からぬくぬく。凝ったディテールが施された、レザータッチのタイプも用意されています。

 

◆Uniqlo U(ユニクロユー)

アーティスティックディレクターのクリストフ・ルメール氏とそのデザインチームが手掛ける「Uniqlo U」。ユニクロのデザインを支える「エンジン」的な存在としてもますます存在感が増しています。21-22年秋冬コレクションではエッセンシャルなアイテムにいっそう洗練が加わり、ポジティブなムードを醸し出しています。

ナチュラルなムードを帯びたダークトーンが落ち着きや温かみを印象づけます。気張らない自然体のソフィスティケート感は、今のユニクロデザインを貫くようにも映ります。上質ニット、セルビッジジーンズなどの定番アイテムがさらに磨き込まれました。白スニーカーやサイドゴアブーツなど、靴をムードチェンジャーに使った、自分らしいアレンジが手に入ります。

 

◆UNIQLO / INES DE LA FRESSANGE(イネス・ド・ラ・フレサンジュ)

フレンチシックの代名詞として知られるイネス・ド・ラ・フレサンジュ氏と共にユニクロが創る「UNIQLO / INES DE LA FRESSANGE」。「フランス風のエフォートレスなスタイルを世界に」というイネスの思いを形にしています。

21-22年秋冬はスイスの小さな村、ロシニエールにインスパイアされたコレクションが登場します。イネスはこの村で少女時代を送りました。

リラクシングな休日にふさわしい、どこかノスタルジックな雰囲気のワードローブ。イネスならではの洗練されたステイケーションスタイルが生まれました。

「居心地のよい、くつろいだ」という意味がある英語「コージー(cozy)」を思わせる、懐かしげでハートウォーミングなアイテムがそろっています。基調になっている色はベージュやモスグリーンといったアースカラー系。カシミヤブレンドのニットポンチョや、3Dニットのドレスなど、自分好みでスタイリングしやすいアイテムが着こなしの選択肢を広げてくれます。

チェック柄や小花柄のアイテムが装いにアクセントを添えます。華やかなラメ素材のアンサンブルニットも登場。イネスらしいマニッシュなジャケットは、大人感の高いウエア。ベレー帽やエコバッグなどの小物も、のどかな日常に華やぎを添えてくれそうです。

 

◆HANA TAJIMA FOR UNIQLO(ハナ・タジマ フォー ユニクロ)

ニューヨークを拠点に活動するファッションデザイナーのハナ・タジマ氏がユニクロのLifeWearと共鳴して生み出す「HANA TAJIMA FOR UNIQLO」。文化の多様性を感じさせるコレクションです。

21-22年秋冬コレクションでは柔らかい素材の流れるような質感がエレガントなフォルムに導きます。切り替えや縫い目に工夫を凝らし、すっきりしたラインや着心地のよさを実現。ハイネックのディテールはネック後ろのデザインを微調整し、より快適性が増す仕立てです。

自然なムードのカラーパレットは、木材や岩石の色合いが装いをアクティブに彩ります。彫刻や籠からインスピレーションを得た網目模様は、花モチーフとともに新コレクションを印象づけています。

 

◆Uniqlo and Mame Kurogouchi(ユニクロ アンド マメ クロゴウチ)

デザイナーの黒河内真衣子氏が手掛けるファッションブランド「Mame Kurogouchi(マメ クロゴウチ)」がユニクロとの初コラボレーションに取り組みました。下着と服の境界線を超えるコレクションです。通気性と速乾性に富んだエアリズムの機能性を生かしながら、シンプルで洗練され、センシュアル(官能的)な下着を生み出しました。

曲線を描くデザインに定評のあるMame Kurogouchiならではのカッティングが生きています。ブラとショーツ、エアリズムを用いたブラトップなどをラインアップ。いずれもストラップ部分を華奢にし、アジャスターやホックにはゴールドの金具を用いるなど、繊細でありつつ、ラグジュアリー感の漂うディテールに仕上げました。

カラーは黒、白、ベージュ、ブラウンなどをそろえ、コーデの幅を広げています。服の下から見えることも織り込んだディテーリングは、シンプルでありながらも大胆なレイヤードに誘います。

部屋着としてはもちろん、 ちょっとしたお出かけに着やすいウエアも用意されました。トップス、スカート、パンツ、ワンピースなどはいずれも黒河内氏らしい洗練が光ります。

 

◆UNIQLO+(ユニクロプラス)

プロが着用するユニフォームを、普段の生活に取り入れられるという魅力的な提案です。スウェーデンのトップ選手たちと一緒に開発したアスリート仕様のLifeWearコレクションが新登場。暑い夏も快適に過ごせます。「Everyday Performance」をコンセプトに、健康的な毎日をサポートするウエアがそろいました。

ユニクロ有明本部に新設された「服の基礎研究所/ラボ(人工気象室)」では、真夏の温湿度を再現できる気象テストや機能実験を実施しているそう。環境に配慮した製法・リサイクル素材を採用していて、機能性とサステナビリティを兼ね備えたコレクションとなっています。

 

◆自分時間に寄り添う「LifeWear」

「コミュニティ」をキーワードに据えて、納得感の高い「自分時間」に寄り添うような装いをそろえた、ユニクロの21-22年秋冬コレクション。他人の視線を気にするのではなく、穏やかでコージーな過ごし方を味わうような暮らし方をいっそう楽しめそうな装いは、着る人の共感や理解を呼び込む提案と映りました。

UNIQLO
https://www.uniqlo.com/jp/

 

Written By Rie Miyata

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