宮田 理江

2021 13 Jul

モダンヒッピーのお手本 ブラックミュージックの伝説ライブ映像を発掘 映画『サマー・オブ・ソウル』公開

伝説的なロックコンサート「ウッドストック・ロックフェスティバル」が開かれたのと同じ1969年の夏に開催された、もう一つの歴史的な音楽フェスが「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」です。名前が示す通り、ニューヨーク市マンハッタンのハーレム地区で開かれ、ブラックミュージックのスターたちが顔をそろえました。「黒いウッドストック」とも呼ばれたこのイベントの様子を記録した映像を基にしたドキュメンタリー映画『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』が2021年8月27日(金)に公開されます。

 

◆60~70年代のソウルファッションにあふれるパワーとメッセージ性

当時のブラックミュージック・シーンの熱気と勢いが映像から伝わってきます。若き日のスティーヴィー・ワンダーや、ブルースレジェンドのB.B.キング、「ゴスペルの女王」マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルズ、再評価が続く歌手のニーナ・シモンなど、人気と実力を兼ね備えたアーティストが次々とライブアクトを披露。中でもファンクロックの代名詞的バンド、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンのパフォーマンスはソウルフルで、全体のクライマックスにもなっています。

 

音楽フェスの映画なので、ステージ上のパフォーマンスが最大の見どころですが、アーティストや聴衆のファッションも会場の盛り上がりを印象づけます。原色が躍り、フリンジもたっぷり。裾の広がったパンツには、ヒッピーカルチャーの薫りも。ニーナのフープイヤリングや、スライのゴールドネックレスといった、主張が強めのアクセサリーにも、当時らしいメッセージ性がうかがえます。

 

◆「Black Lives Matter」ともリンク 当時の空気を再現

30万人以上の聴衆が参加したといわれるこのフェスの映像は、なぜか約50年も未公開のままでした。アメリカで公民権運動が盛り上がり、ベトナム反戦運動も広がった時期です。黒人解放闘争を繰り広げたブラックパンサー党が力を持ち、前年には黒人の権利獲得に尽くしたマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺されています。映画は単にライブアクトを再現するだけではなく、当時の社会情勢を示す映像も織り交ぜて、「暑かった夏」の空気を伝えることに成功しています。

先に挙げたアーティストのほかにも、グラディス・ナイト、デヴィッド・ラフィン、マックス・ローチなど、大勢の伝説的アーティストが登場。ザ・フィフス・ディメンションの大ヒット曲『アクエリアス』も聴きどころの一つです。ステージに上がったアーティストが現時点でこのライブ映像を見て、当時を回想するシーンも印象深く映ります。

「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)」の主張が共感を広げる中、アフリカンアメリカンのカルチャーはあらためて関心を集めています。ブラックミュージックはその象徴的な要素であり、強烈なパワーとメッセージを感じ取れるこの作品は50年を経た今こそ見直される価値があると言えそうです。タイトル通り、ソウル(魂)を揺さぶられながら、時を超えたライブ感に浸れます。

 

 

『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』
原題:SUMMER OF SOUL (OR, WHEN THE REVOLUTION COULD NOT BE TELEVISED
監督:アミール・“クエストラブ”・トンプソン
出演:スティーヴィー・ワンダー、B.B.キング、ザ・フィフス・ディメンション、ステイプル・シンガーズ、マヘリア・ジャクソン、ハービー・マン、デヴィッド・ラフィン、グラディス・ナイト・アンド・ザ・ピップス、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン、モンゴ・サンタマリア、ソニー・シャーロック、アビー・リンカーン、マックス・ローチ、ヒュー・マセケラ、ニーナ・シモンほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン  © 2021 20th Century Studios. All rights reserved.
公式サイト:https://searchlightpictures.jp