宮田 理江

2018 02 Mar

2018-19年秋冬ロンドン・ファッションウイークで相次いだ、新鋭・若手のチャレンジングな提案

2018-19年秋冬のロンドン・ファッションウイーク(LFW)では新鋭・若手の提案がLFW全体を活気づかせました。もともと次世代クリエイターを送り出す力に定評のあるLFWですが、層の厚さをあらためて証明しました。ストリート&ユースカルチャーの取り入れや、多民族都市ロンドンならではの異文化ミックスなどがランウェイショーとプレゼンテーションにスリリングな見どころをもたらしていました。

 

◆ニコパンダ(NICOPANDA)
https://www.nicopanda.com/

レディー・ガガのスタイリストを長く務め、「ディーゼル(DIESEL)」も任されていた有名スタイリストのニコラ・フォルミケッティ(Nicola Formichetti)は「ニコパンダ(NICOPANDA)」のランウェイをプレイフルに彩りました。会場のシートにはロゴ入りキャップが置かれ、スタート前から若々しいコレクションを予感させました。

チェック柄やレオパード柄を混じり合わせ、アナーキーなまでのカラーミックス。サイケデリックカラーのスキーニット帽、カラフルなスニーカーが色を躍らせました。ロゴマークやバッファローチェック柄も組み込んで多彩な「柄on柄」が登場。全体のムードは1990年代の音楽シーンが下地になっていて、バックに流されていたニルヴァーナとヒップホップをリミックスするような感覚。モデルのキャスティングにも多様性がうかがえました。

 

◆ロベルタ アイナー(Roberta Einer)
https://www.robertaeiner.com/

東欧エストニア出身のデザイナーが自らの名を冠した新鋭ブランド「ロベルタ アイナー(Roberta Einer)」は伸び盛りのロンドンブランドです。ファッションスクールの名門校、セントラル・セント。マーティンズ、ウェストミンスター大学を卒業後、ブランドを立ち上げました。「メアリー カトランズ(Mary Katrantzou)」や「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」で学び、「バルマン(Balmain)」で腕を磨きました。2016年にはニューヨークの百貨店「サックス・フィフス・アベニュー」が選ぶ新鋭デザイナー賞を受賞しました。

2018-19年秋冬コレクションは1980年代のSF映画『ブレードランナー』や『トロン』に着想を得て、きらめきと未来感を帯びた装いを提案。肩を張ったパワースーツや、けばけばしいネオントーンの色使いには80年代風のノスタルジーもまとわせ、「レトロフューチャー」のムードを漂わせています。パフィなキルティングジャケット、マイクロミニ丈のスカートなどにはお得意のストリートラグジュアリーを注ぎ込みました。

 

◆STARSICA
http://starsica.com/

韓国・ソウル市出身のデザイナー、Ike Seungik Lee氏が2016年に立ち上げた、まだ若いブランド「STARSICA」はギリシャ神話の悲劇を着想源にコンセプチュアルなコレクションを組み立てました。アートを学んだ経験を持つというデザイナーは彫刻的なアプローチで作品にユーモアを吹き込みました。

ウエストから裾まで縦に走らせたファスナーを使って、スリットの深さを自在に変えられるロングスカートは大胆な提案。神話にちなむモチーフをふんだんに取り入れ、馬の蹄鉄風モチーフをトプスにいくつもあしらったり、ハート形の飾りをざっくり編みセーターに散らしたり。極めつけは棺桶形のバッグ。神話や伝説とファニーに戯れ、背中に天使を思わせる翼を配した実験的な演出も披露しました。

 

◆minki
https://www.instagram.com/minki_london/

香港出身のデザイナー、Minki Cheng氏が手がけるウィメンズブランド「minki」はプレゼンテーション形式で18-19年秋冬コレクションを発表しました。セントラル・セント・マーティンズを12年に卒業しているデザイナーは実験的なファブリック使いを好み、今回も重厚感のあるキルト生地をアウターに用いつつ、透けるチュール系を妖精ライクなドレスに使って、素材感の違いを際立たせています。

オーバーサイズを多用して、マニッシュな量感を生みました。3Dプリントや半透明PVCといった新技術・マテリアルを取り入れながらも、どことなくノスタルジックな風情があり、複雑なミックステイストを醸し出しています。天然石の表情に着想を得ているだけに、ミネラルな色味や質感を全体に帯びていました。

 

◆マザー オブ パール(MOTHER OF PEARL)
https://www.motherofpearl.co.uk/

ロンドンブランドの「マザー オブ パール(MOTHER OF PEARL)」はショーの直後から商品を購入できる「シーナウ・バイナウ(See now,buy now)」形式で18年春夏コレクションを発表しました。2002年にスタートしましたが、現在はエイミー・ポウニー(Amy Powney)氏がクリエーションを引き継いでいます。

英国画家デビッド・ホックニーにインスパイアされて、パール使いや柄ミックスが楽しい、チアフルな作品を送り出しました。マルチカラーの総花柄ワンピース、ストライプ柄のセットアップなど、多彩なモチーフ使いでランウェイを盛り上げました。大ぶりのドット(水玉)、チェック柄も投入。ピクニックに出掛けたくなるような気分に誘います。ブランド名にちなむパール飾りは二の腕に連ねて、華やぎを添えました。足の甲にはビッグリボンをオン。シルクのアンクルタイも巻いて、ビクトリアンなロマンティック感を寄り添わせていました。

出身国・地域が様々だったのも、今回のLFWで目立った点です。新鋭・若手が受け入れてもらいやすい下地があるだけに、LFWはこの先も次世代の担い手を送り出す苗床というポジションを保ちそうです。中堅やベテラン、大御所の主要ブランドは次の「ランウエィ解読」で詳しくリポートします。

 

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「MARKUS LUPFER(マーカス ルプファー)」2018-19年秋冬ロンドンコレクション
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「SHARON WAUCHOB(シャロン ワコブ)」2018-19年秋冬ロンドンコレクション
http://blog.apparel-web.com/theme/trend/author/riemiyata/28ef542f-eab1-426b-a6af-4a6bd563a920

2017-18年秋冬ロンドン・ファッション・ウィークの風景 「JW ANDERSON」の挑戦 次世代を担う新たなフォトグラファーを発掘
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Written By Rie Miyata 

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