宮田 理江

2019 13 Oct

徳島県の藍にフォーカス 「matohu(まとふ)」、2020年春夏コレクションを発表

「matohu(まとふ)」は2019年10月7日、2020年春夏コレクション「藍の源流」を東京・青山のまとふ 表参道本店で発表しました。19年春夏シーズンから始まった「手のひらの旅」シリーズの第3章にあたり、徳島県の藍に焦点を当てたコレクションになっています。

これまでと同じく、映像からスタートしました。堀畑裕之デザイナーのナビゲート解説に沿って進む構成は、まるでテレビのドキュメンタリー番組を見ているよう。徳島県の藍栽培家や藍師たちの仕事ぶりを丁寧に紹介していきます。若手のBUAISOUにもじっくり話を聞いていて、全編に「藍愛」が感じられました。

昔は日本人の多くが着ていた、藍染めの服ですが、需要が減り続け、栽培家も藍師も減っていきました。染色や繊維は「工業」とみなされがちですが、堀畑氏は「農業だと思う」と述べます。植物から命をもらう天然染色の意味を再確認する機会になりました。

映像に続いて、様々な藍染め作品が登場。いずれもナチュラル感が高く、自然体のサステナビリティーが提案されています。伝統的な藍染めウエアを、モダンにアレンジして、懐かしさと着心地を同居させていました。

その後、ショップ内でモデル着用のルックがプレゼンテーション形式で発表されました。最初のルックは和紙で仕立てた服。単にブルーでばっちり染めてあるのではなく、赤や黄色が染みこんで生まれた、奥行きのある青。植物の力を実感します。パンツはシアサッカー風のしじら織り。シルク入り素材が涼やかさに気品を添えていました。

次のルックは4色の糸を結んでつくったという水をイメージした作品です。セットアップが上品で軽やかな印象です。

3番目がろうけつ染め。和紙にろうを塗って乾かす染色は、BUAISOUのメンバーが手がけたそうです。藍染めにネオンカラーの服をミックスコーディネートして、藍をコンテンポラリーに演出しています。コーデュロイのパンツは立体感を引き出す模様があしらわれています。

金属を藍染めしたネックレスとイヤリングも披露されました。全体に藍染めと和紙の表現力を巧みに引き出したコレクションでした。

堀畑氏の言葉で印象的だったのは、「実際に藍染めの服を買って、何日か着続けてみたところ、気のせいかもしれませんが、何だか心が安らぎ、落ちつくのです。自然から出てきた染めだから、自然のエネルギーが体内に入る感じ。やはり自然の力はすごい」という言葉でした。ケミカルな素材を極力遠ざけた、今回のコレクションは、素肌も喜ぶのに加え、スピリチュアルなパワーも帯びているような気がしました。

matohuは2020年1月8日(水)~22日(水)に、東京・南青山のスパイラルガーデン(スパイラル1階)で、「日本の眼」シリーズの集大成となる展覧会「日本の眼展」を開催します。しかも入場無料です。

日本の美意識を、服飾デザインを通して表現し、8年間17回にわたって、東京コレクションで発表してきた「日本の眼」シリーズ。今回はアートインスタレーションと一緒に寛賞できるうえ、トークイベントやライブ演奏会など関連企画も予定されているそうなので、今から開催が待ち遠しくなってきます。

matohu
https://www.matohu.com/

 

Written By Rie Miyata

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