宮田 理江

2019 23 Sep

ロンドン・ファッションウィークでサステイナビリティ浸透と伝統進化を体感 コールドロップスヤード訪問、ユニクロ展、アート三昧

2019年9月13日~17日に開催されたロンドン・ファッションウィークの取材に行ってきました。コレクションリポートは「ランウェイ解読」で公開される予定です。今回は、合同展やアート展、新スポットなどを通じて、私の感じた「ロンドンの今」をお伝えしたいと思います。

 

◆サステイナビリティに熱心な作り手にフォーカス

ロンドンコレのメイン会場では、1フロアを割いて、「Positive Fashion(ポジティブ・ファッション)」展示会が開催されていました。サステイナビリティに熱心なデザイナーや作り手に光を当てた企画です。地球にやさしいものづくりや、持続可能な社会に役立つ取り組みなどを紹介。一般的にはリサイクルや原料調達の面がイメージされやすいサステイナビリティですが、この催しでは平等やダイバーシティ、クラフトマンシップ、コミュニティなどにも目配りが行き届いていました。

写真は双子の姉妹がデザイナーを務める「フェルダー・フェルダー(Felder Felder)」、3姉妹で手がけている、100%土に還る素材で作るバッグブランドの「Groundtruth」、パジャマブランドの「Pjoys」。

サステイナビリティに熱心なロンドンのブランドとしては、先駆者的な存在の「ステラ マッカートニー(Stella McCartney)」が有名ですが、今では新たなスタンダードと言えるまでに広がってきました。今回のファッションウィークでは、街のあちこちで、サステイナビリティの浸透を感じました。

#PositiveFashion exhibition
https://www.londonfashionweek.co.uk/Positive-Fashion-Designer-Exhibition/About

 

◆19世紀×モダン 話題のスポット「コール ドロップス ヤード」

アパログの山中健さんの記事でもおすすめしていましたが、キングズクロスに誕生した、運河沿いにある複合施設「コール ドロップス ヤード(Coal Drops Yard)」にも行ってきました。グーグル(Google)の巨大オフィスが建築中です。19世紀に作られた元石炭集積場のレンガ造りを生かしつつ、現代的にアップデートされています。

ファッション、フード、アート、ライフスタイルなどを楽しめる多面的スペースです。天井が高く、開放的な気分で過ごせます。ロンドンの人気セレクトショップ「ウルフ&バジャー(Wolf & Badger)」はエシカルなファッションブランドを打ち出しています。店内のカフェもオーガニックで、健康的なムード。内外装がおしゃれなのに、肩の力が抜けた気分で過ごせそう。カップルや家族連れなど、様々な人が訪れていて、幅広い人気ぶりを感じました。ロハステイストやデザインセンスも感じ取ることができる、魅力的な新スポットです。

Coal Drops Yard
https://www.coaldropsyard.com/

 

◆ユニクロをインスタレーションアートで体感できる大規模展覧会

ロンドン・ファッションウィーク中にユニクロがロンドンでグローバル展覧会「The Art and Science of LifeWear: New Form Follows Function」を開催しました。プレスプレビューに参加しました。ユニクロが初めて海外進出した地であるロンドンで、アート、サイエンス、クラフトマンシップという3つの観点から「LifeWear」を改めて考察するイベントです。

ヒートテックやエアリズム、ウルトラライトダウンなどの機能性を印象づける展示のほか、各種のアート作品、サステイナビリティ活動を紹介するブースなども設けられ、体験型で楽しめる内容となっています。コラージュアーティストの河村康輔(KOSUKE KAWAMURA )氏がアートワークを披露しました。

50色ソックスがランプとなり、色とりどりに灯る鏡張りの部屋「50 Colours of Socks」の部屋や、天井から吊るされた無数のLifeWearアイテムが万華鏡のオブジェクトのように見える巨大なインスタレーションなども展示されています。アートと一緒に記念撮影して、ユニクロワールドを楽しみました。

The Art and Science of LifeWear: New Form Follows Function
https://www.uniqlo.com/lifewearday/jp/

 

◆ミントデザインズがギャラリーでインスタレーションを開催

ロンドン・ファッションウィークの日程に合わせ、日本ブランド「mintdesigns(ミントデザインズ)」はロンドンの「POCKO GALLERY」で2020年春夏コレクションを発表しました。さらに、「Black Cinderella」展を2019年9月12日(木)から27日(金)まで開催。今回はブランドとして初の海外でのコレクション発表となりました。

コルクでできた作品は魔法をかけられる前のシンデレラを表現。段ボール箱に囲まれたドレスは、カットグラスをモチーフにした柄のテキスタイルで仕立てられていて、魔法をかけられた後の変身したシンデレラを表しています。

展覧会開催に伴い、ロンドンを拠点に活動するイラストレーター、Alessandra Genualdo(アレッサンドラ・ジェヌアルド)氏とコラボレートした作品も展示されました。

ミントデザインズは10年ほど前から、写真プロジェクト「Happy People」を続けています。様々な都市でその土地のいろいろな年齢、性別の人にミントデザインズの洋服を着てもらい、その人のプライベートスペースで写真を撮るという試みです。今回のロンドンでも「Happy People」の撮影も行ったそうで、どのような感じに仕上がるのか楽しみです。

Black Cinderella
http://riemiyata.com/news/36338/

 

◆マノロ ブラニクとウォレス・コレクション ときめきの世界

「マノロ ブラニク(Manolo Blahnik)」とウォレスコレクションの企画展「An Enquiring Mind(探求心):「 Manolo Blahnik at the Wallace Collection」へ行ってきました。9月1日までで終わる予定だったものが、好評を受けて、10月27日まで延長されたという、人気の企画。今回の滞在中に見ることができて、ラッキーでした。しかも入場無料でした。

ウォレスコレクションの名品と、マノロ ブラニクの名作シューズを組み合わせるという、エキサイティングな展覧会です。マノロ・ブラニク氏自らがアーカイブから靴をセレクト。ウォレスコレクションの数々に溶け込んだマノロシューズたちにうっとり。至福のひとときを過ごしました。ヴィクトリア朝のファッションが新たなトレンドになりつつある今、英国の歴史的テイストを感じるうえでもぴったりの展覧会でした。

An Enquiring Mind:「 Manolo Blahnik at the Wallace Collection
https://www.manoloblahnik.com/jp/wallace-collection/

 

◆自撮りの元祖に驚嘆 シンディ・シャーマンの回顧展へ

アメリカの写真家・映画監督、Cindy Sherman(シンディ・シャーマン)氏は、コンセプチュアルなメッセージを忍び込ませたセルフポートレート作品で有名です。ファッションの世界でも「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のコレクションで着想源になったことでも知られています。今回の滞在中に、たまたま彼女の回顧展が開かれていたので、展覧会最終日にNational Portrait Galleryへ駆け込みました。

約180点が展示され、一見した限りでは本人とはわからないような作品もありました。今でこそセルフィー(自撮り)は当たり前ですが、シャーマン氏の念入りに作り込んだ自撮り作品は今見ても新しさを感じさせます。

Cindy Sherman National Portrait Gallery
https://www.npg.org.uk/whatson/cindy-sherman/exhibition/

 

ロンドンモードではサステイナビリティが新たな「コード」になりつつあります。ヴィクトリアンテイストやテーラードなど、英国の伝統的なよさに目を向ける動きも広がってきました。都市開発の面でも、コール ドロップス ヤードのような新名所が誕生し、街自体のアップデートも続いています。間近に迫るブレグジットや、出口の見えない若年失業などの問題も抱えていますが、ロンドンがファッションも街もバージョンアップを重ね、文化的発信力も衰えさせていないことを実感できた英国出張でした。

Written By Rie Miyata

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