田中 美貴
ドルチェ&ガッバーナのリアルショーを見て考えた
ドルチェ&ガッバーナの2021春夏メンズランウェイショーに行って来た。ご存知の通り、Covid-19感染防止のため、2020秋冬ウイメンズコレクション以来、観客を入れてのショーは行われていなかったため、これはポストコロナ最初のリアルショーのうちの一つとなる。ドルチェ&ガッバーナのコレクションについては後日掲載される「ミラノデジタルファッションウィーク」の記事内で詳しく触れるとして、今日は、ロンドン、パリオートクチュール、パリメンズ、そして現在ミラノで行われているデジタルファッションウイークがリアルショーにとって代われるかについて考察したい(・・・というほどたいそうなものでなく、単純にショーの感想文、ごくごく個人的な意見なので、あまり突っ込まず読み流してください)。
ドルチェ&ガッバーナのショーは素晴らしかった。コレクションはイタリアの建築家ジオ・ポンティがデザインしたソレントのホテルからのインスピレーションで、構築的なピースが多いのだが、そんな様々な生地をパッチワークやピースの組み合わせで表現しているのが、目で見るからこそよくわかる。仕立てのディテール、基調となっている青の微妙なニュアンスも、自然光だからこそなお美しい。会場となったミラノ郊外にある抜けのよいウマニタス大学のキャンパスの雰囲気も、BGMとして歌手たち(後日追記:出演したのはIl volo。日本でも有名とは知らず失礼しました)が生で歌うイタリア民謡も(曲のジャンル的に好きか嫌いかはさておき)、ショーを盛り上げる。そしてここは同ブランドが研究援助のための寄付を行っている大学であり、設営やケータリングなどすべての関連会社はこの支援に賛同して無償で今回のショーに携わった、というちょっといい話まで揃っている。
結論としては(あくまで現時点での感想です)、デジタルはリアルショーには取って代われない、と私は思う。リアルショーは心が躍る。エネルギーが違うのだ。実物の持つエネルギーを、それを写した物にはだせない。そしてそのエネルギーはバイヤーにもメディアにも(そしてメディアから発信される文章や映像によって読者にも)伝わるはずだ。
とはいえ、実際のところはまだまだ感染が広がるこの現状、そしてファッション界が大きな経済的ダメージを受けている状態で、以前のようにみんなが大掛かりなリアルショーに戻るのはまだ無理なのだから、こんなことを言っても仕方がないのだ。そしてデジタルだからこそストーリー性のある作品ができたり、デザイナーの言葉をルックと共に紹介できたり、製作の裏側を垣間見れたりと、情報ツールとしてデジタルには無限の可能性があることもよくわかっている。誰しもがいつでも、何度でも見られるという利便性もある。
でもデジタルでは魂が伝わらない。・・・と思うのは、私がYOUTUBE世代からはほど遠い、昭和生まれだからだろうか。