栗田 亮

2018 15 Mar

運のいい人ってどんな人ですか?「バッタを倒しにアフリカへ」に学ぶ。

今回は、本を紹介します。

みなさんは「運のいい人」というのは、どういう人だと思いますか?

行動経済学者のダン・アリエリーによると、「運のいい人」とは、「人よりたくさんのことをしょっちゅう試している人」のことだそうです。
Luckier people tend to try more frequently, and by trying more often they also succeed more.

たとえば、バスケットボールで100%確実なときにだけシュートする選手より、成功率は50%でもシュートする回数が圧倒的に多い選手の方が、多く得点する。試す回数が多い方が上手くいくことも多くなるという理屈です。

現実の人生で、多くの人は、なるべく失敗しないように用心しながら生きているわけですが、「運のいい人」は、積極的に失敗を取りに行こうとします。いつも小さな実験を繰り返して、早く、軽く失敗しておくことで有望でない道がわかります。それを素早く切り捨てて有望な道を進むことができる人が、運をつかめめるのだそうです。

アリエリー教授の、「運のいい人」になるためのアドバイスは、

第1に、人生は、ある程度は数当て賭博のようなものだから、いろんなことをしょっちゅう試すこと。

第2に、他人の成功に注目するだけではなく、その人が試したものの数に注目すること。(つまり、他人の失敗から成功の可能性が低いものを見極めること)

です。

So, what’s the advice? First, life is a numbers game—so try more frequently. Second, it’s good to look at the number of things that other people attempt—not just their successes

話題の本「バッタを倒しにアフリカへ」 (光文社新書)は、この「運のいい人」になるための実践の書として読むことができます。

著者の、前野 浩太郎氏はバッタ好きが昂じて昆虫学者を志した学者の卵です。しかし、博士号を取得したものの就職が決まりません。

なんということでしょう。生活のことをうっかり忘れていた。軽く取り返しのつかないところまで、私は人生を進めていた。「末は博士か、大臣か」ともてはやされた一昔前、いや二昔前とは違い、世の中には、道を少々歩けばぶつかるほど博士がひしめきあっている。過剰に生み出された博士たちは職にあぶれ、職を求めて彷徨っている。ライバルひしめきあう中で、職業として昆虫学者をこのまま目指していいものなのか。

そこで、一発逆転を狙って、アフリカ西部にあるモールタニアに単身乗り込むところから物語が始まります。現地の言葉(フランス語)もわからないのに。

たぶん、人生には勝負をかけなければならないときがあり。今がその時に違いない。自分ならどうにかなるだろうという不確か自信を胸に、アフリカンドリームに夢をかけることに決めた。

サバクトビバッタはアフリカで数年に1度大発生し、農作物に大きな被害を与えているそうです。前野氏は、研究室で飼育実験ばかりしいてたので、自然界でのバッタを観察したいという気持ちもありました。ところが相手がバッタだけに予想外の出来事が連続します。

バッタが大発生することで定評のあるモーリタニアだったが、建国以来最悪の大干に見舞われ、バッタが忽然と姿をけしてしまった。人生を賭けてわざわざアフリカまで来たのに、肝心のバッタがいないという地味な不幸が待っていた。

不幸は続き、さしたる成果をあげることもなく無収入に陥った。なけなしの貯金を切り崩してアフリカに居座り、バッタの大群に相見える日がくるまで耐え忍ぶ日々。バッタのせいで蝕まれていく時間と財産、そして精神。貯金はもってあと1年。全てがバッタに喰われる前に、望みを次につなげることができるか。

このような絶望的な状況の中で、前野さんは、モーリタニア人の相棒と共に、あの手この手といろんなことを試していきます。

いきなり「アフリカのバッタ問題の解決」などと、果てしない目標を掲げてしまった日には途方に暮れてしまう。まとめやすいものから順に形にしていき、完成の喜びを味わい、調子に乗ったところで次にもっと時間の掛かるものにチャレンジしていく作戦を取った。やれやれ、自分で自分のご機嫌をとるのも一苦労だ。

終盤、ぎりぎりに追い込まれてからの行動力が凄いです。逆転に次ぐ逆転で運を引き寄せ、最後にはバッタにまで運をもらうかたちで、勝利(就職)をつかまえます。

できることを精いっぱいやって運を引き寄せる姿は、アリエリーの「運のいい人」理論の実践者の姿を感じさせます。

同時に、成功の可能性が低いものには手を出さない態度が徹底しています。

たとえば、アフリカでは車の運転を一切しません。フィールドワークをするためには、縦横無尽に動くための「足」が必要なのですが、日本とは逆の右車線通行で、自分で運転したら取り返しのつかないウッカリをやらかす危険性が高い。運転技術を磨きに来たわけではない、という理由で、自腹を切って、モーリタニア人のドライバー兼ガイドを雇います。

また、そのドライバー兼ガイドはフランス語しか理解しないのですが、この機会に少しでもフランス語を覚えようという努力は一切しません。

その代わり、二人にしか理解できない共通言語を編み出します。片言のフランス語と英語と身振り手振りで、「オジョルドウィ、プレミネ、プログラム、アシェット、マンジュ、シルブプレ(今日の予定だけど、まずは食べ物を買ってきて)」といった調子のクレオール言語を開発します。それを使ってかなり複雑な会話もこなし、ドライバー兼ガイドを強力な相棒に育てていきます。下手なフランス語では、こうは行かなかったかもしれません。

目標を決めるということは、同時にやらないことを決めることです。時間は限られてますから、自分がやらないことを決めて、他人に頼むという態度はとても大事なことだと思います。

本書には研究の話が少ない、自慢話が過ぎるとの批判もあります。たしかに、軽快な文章を読むと、理系の研究者とは思えないところがあります。おそらく前野さんは、いわゆる学者や文化人タイプの人ではなく、起業家タイプの人なのだろうと思います。なんでも自分でやろうとせず、できないことは、他人を巻き込んでやろうという、その巻き込み方がすごいのです。

もし、みなさんが「自分は運があんまりよくないな」と感じているなら、きっとまだ失敗の数が少ないのかもしれません。目標に向けて失敗の数を増やすことで、運は引き寄せられてくるらしいですよ。

 

まとめ

「運のいい人」とは、他人よりたくさんのことを、しょっちゅう試している人。

バスケットボールに例えれば、シュートの成功率ではなく、シュートの回数を増やすことを考えること。

特に、人生というゲームにおいてはこれが大事。
いつも小さな実験をして、はやめに軽く失敗しておくこと。

得でないことは徹底してやらず、人に頼むこと。(応援者を増やす)。

運は人が運んでくるもの。

 

きょうはここまで。
(キンコンカン)

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