栗田 亮
アパレルとファッションって何が違うんですか?
今日は、「アパレルとファッションは何が違うんですか?」という質問について考えてみましょう。
前回は、「アパレル」について、
- もともと「衣料品」のこと。
- 最近では「既製服」という意味合いで使われることが多い。
どいうまとめをしました。
では今日は「ファッション」について調べてみましょう。
広辞苑によると
【ファッション】
流行、はやり
特に衣服・髪型などにいう。
転じて服装
とあります。
また、Oxford Dictionaryでは、
【Fashion】
1. a popular style of clothes, hair, etc. at a particular time or place; the state of being popular.
2. a popular way of behaving, doing, an activity, etc.
3. the business of making or selling clothes in new and different styles.
【ファッション】
1.特定の時期と場所で人気のある衣料品・髪型などのスタイル
2.振舞い方・行為・活動などで人気のあるやり方
3.新しく、今までと異なるスタイルの衣料品を作り・売る仕事
と定義されています。
ウィキペディアには、
ある時点において広く行われているスタイルや風習のことである。特に、人々の間で流行している服装を指すが、装いに関係する装身具、美容(理容、髪型、化粧)、香水などもファッションの範疇である。さらに広義には音楽などの文化やライフスタイルまでも包括しうる。
とあります。
また、英語版のWikipedia では、
a popular style or practice, especially in clothing, footwear, accessories, makeup, hairstyle and body.
特に、衣料品、靴、装身具、化粧、髪型等で人気のあるスタイルや慣行
と、定義されています。
いずれも共通しているのは、「ファッション」は、もともと「流行」や「はやり」という意味合いから始まったという説明です。
「流行」や「はやり」は、新しいものへの好奇心や自分を際立たせたいという自己主張や、逆に、他人から取り残されたくない、みんなと同じでいたいという同調性などといった人間の心理から起こるものです。新しい服を見てワクワクしたりドキドキしたりするその気持ちが「ファッション」の源だと言えます。
同じ衣料品をいうにしても、「アパレル」と言う場合には、紳士服、婦人服、子供服、スポーツウェア、制服、といったように、「機能」に重点が置かれるのに対して、「ファッション」と言う場合には、人間の心の領域、服が発する「意味」に重点が置かれているのです。
また「流行」は、始まり、広がり、盛りがあってやがて消えてゆきます。その過程で、「いつ」「どこで」という要素が、欠かせない条件となります。「ファッション」には常に時代性や地域性がついてまわるのです。
つまり「アパレル」は衣料品の持つ「機能」に着目し、「ビジネス」の領域で使われることが多いのに対して、「ファッション」は衣料品が発信する「意味」に着目し、「文化」に関係した領域で使われることが多いのです。
「機能」は合理的に考えることができますが、「文化」は理屈では割り切れません。ですから、「ファッションとは何か」ということについて、突き詰めて考えてゆくと、大変難しい議論になってきます。
いわゆる「ファッション論」で、「ファッションとは何か」という問いに対する論点は多岐にわたります。キーワードだけ抜き書きしてみても、
「習慣」
「スタイル」
「欲望」
「メディア」
「消費」
「身体解釈の包装・強化」
「アナロジーの創造」
「社会的秩序とのすり合わせ」
「対象との対話やフィードバック」
「生き方の問題」
「個人的意思表示」
「自己表現」
「主調となる世界の概念の表現」
「社会の徴表」
「記号」
「個人と社会の矛盾と対立」
「孤立化への欲求、共感、模倣」
「同調化と孤立化」
「同一化と差別化」
「美的、精神的、社会的充足感」
「精神の活性剤」
など難解な表現が並んでいます。
これは(好意的に見れば)、人間が複雑な生き物であることの証といえそうですね。
一方、「アパレル」を「既製服ビジネス」という意味でとらえた場合、この商売は、見込みで大量に商品を仕込み、そのリスクを利益に変えることを根本としていますから、人々の心の変化、つまり「流行」を先読みできなければ成り立ちません。「ファッション」をうまく取り入れなければ「アパレル」は成り立たないビジネスなのです。
「アパレル」という合理的ビジネスは「ファッション」という非合理な「文化」を取り扱うという宿命を負っています。「アパレル」は、数字だけでは割り切れない、奥深いビジネスだとも言えます。
「アパレル」と「ファッション」は切っても切れない関係だということがよくわかりますね。。
まとめ:アパレルとファッションて何が違うんですか?
「アパレル」
衣料品・既製服
モノ・単品
「機能」性重視
「ビジネス」の領域で使われることが多い
「ファッション」
流行・はやり 服装
着こなし・スタイル・コーディネート
「意味」性重視
「文化」の領域で使われることが多い
みなさんも、自分が意識するかどうかは別として、服を着るという行為を通してなんらかの「意味」を発信している訳です。
例えば、今日あなたはMA-1を着ていますが、もともとは1958年に開発されたアメリカ軍のフライトジャケットから派生したものです。本来「機能」から開発されたMA-1を、今日あなたは「ファッション」としてそれを着ている。
あなたはMA-1を通して、どんな「意味」を発信していますか?
次回は、そのことについて考えてみましょう。
事例は、1960年代にイギリスで起こった「モッズ」という流行です。
では、今日はここまで。
(キンコンカン)