久保 雅裕
「毎日ファッション大賞」推薦委員を依頼されて、ふと思ったマスコミの役割について
今年、「毎日ファッション大賞」の推薦委員を拝命した。大変光栄なことで、熟考した上で 各賞を推薦させてもらった。11月中旬に紙面を通じて発表されることになる。
マスコミが、このように業界を励ますアワードを出すことは、とても意義深いことだ。 かつて籍を置いていた繊研新聞社でも、「繊研賞」「バイヤーズ賞」「テナント・デバロッパー賞」「流通広告賞」などを制定し、「業界とともに歩む」という立場と「業界を励ます」という視点から行ってきた。毎日新聞社も、こうした趣旨から取り組んでこられたのだと思う。長年にわたる活動に敬意を表したい。
さて昨今は、インフルエンサーやブロガーによるSNSの情報発信に対する信頼感が高いと言われる。一方でマスメディアの影響力低下が著しい。
昨年から今年にかけて、行政の腐敗の数々が明るみに出ても、野党の追求の弱さと与党のはぐらかしに対して、マスコミはほとんどその使命(公権力の監視機能)を果たすことができなかった。矛先も曖昧で、粘り強い追求も為されないまま、うやむやにされ、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」かの如く、終息してしまったようだ。
結果として、 マスコミに対する不信感は募るばかりで、身近な声や信頼に足る「友」の SNSの方が信じることのできるメディア(媒体)となっていくことを加速させてきた。協調型フィルタリングにより同一傾向の声が表示されるから、当人にとっては尚更、親和性と信頼感も高まるわけだ。
しかし、公平性や信憑性という観点からの信頼は、完璧とは言えないまでも、まだマスコミにとっては、維持できる砦なのだと思う面もある。この信頼性を、もう一度マスコミが取り戻すこと、それが求められているのだ。タブーを許さず、権力におもねず、自身のスタンスを持ちつつ、頑なに、強く居てほしいと思う。
そんな事を考えながら、マスコミの役割について、今一度、思いを致した。
もちろんSNSとマスメディアを対立的に観るつもりは、さらさらないことだけは付記しておく。