久保 雅裕

2022 29 Jan

朽ちていくものへの憧憬を紡いだ展覧会「解体清祓は恋の魔術」/などや恵比寿

写真提供・などや恵比寿

「テキスタイル+ミュージック」の水田祐史さんが展覧会を行うということで恵比寿にある古民家を改装した「などや恵比寿・浮遊ギャラリー」を訪ねた。タイトルは「解体清祓は恋の魔術 (かいたいきよはらいはこいのまじゅつ)」という難解なもの。蚊帳の綿素材に柄をプリントした布地が幾重にも重なったり、垂れ下がったりし、どこかの祭壇のような設えになっている。

展覧会は、この建物の解体を前にした最後のエキシビションとして2022年1月28日から開催されており、3月13日までの会期で金土日祝のみ開かれる。土日を中心に水田さんが10分程のパフォーマンスを行う予定で、筆者は初回のそれを鑑賞させてもらったが、それは見てのお楽しみということにしておこう。むしろ見るというより体験し、体感し、自分とパフォーマーの間に何を感ずるかが大切な時となるようなイメージだ。

写真提供・などや恵比寿

さて、この「などや恵比寿」は、なんぞが運営するギャラリーで、建築ディレクターの岡村俊輔とテクニカルディレクターの遠藤豊(LUFTZUG)が立ち上げた芸術、文化、食、生活などの多様な発展と変化に対して、敏感に作用する場と感覚の構築を目指した施設だ。あと数年で取り壊される予定のおよそ60年を経た庭付きの民家を、建物の風合いを残しつつ、改修し活用してきた。展示やアトリエ、プライベートキッチン、コーヒースタンド、コワーキング、レジデンスなど様々な目的の場として活用できるオルタナティブスぺースとして、人々を呼び入れながら実験的なプロジェクトを行い、創造的な交流ハブとして機能してきたそうだ。通りに面した壁面の2階部分を大きく開口し、24時間、誰でも鑑賞可能な 「Fuyu Gallrey(浮遊ギャラリー)」 を開設し、月替りでデザイン、アート、音楽、パフォーミングアーツなど領域をまたいだ企画展を実施してきたという。

何層もの布(版)が天井から吊るされ、下から覗くと一枚の絵として完成する

庭には、この建物の一部の写真を手捺染した水田さんのテキスタイル作品も展示されている。ガラスの中に閉じ込められた作品は、数々のアーティストへのオマージュなのか、消失する建物への鎮魂歌なのか、グルジア語で書かれた一節とともに何かを語りかけてくる。

その他写真・筆者撮影

八百万の神々の背景を持つ日本人にとって、身近にある様々な物や所に宿る神を感じる場は、そこかしこにあるだろう。そんなことを思い起こさせる水田さんの作品と、この古くて懐かしい建物に触れてみてほしい。

主催:などや、ミズタユウジ、nanzo Inc.

プロデュース:遠藤豊(LUFTZUG)、岡村俊輔(などや) 

会場グラフィックデザイン:林琢真

[制作協力] 衣装:Kumiko Takeda、RITENUTObytac / 刺繍:Tomoko Takagi / プリント:株式会社光伸プランニング サウンド:畑中正人 / 振付:湯浅永麻 / 記録映像パフォーマンス:湯浅永麻、中川麻央 協力:松崎裕紀 / 記録映像撮影:Satomi Yamauchi

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