久保 雅裕

2020 23 Feb

メゾン・エ・オブジェから見えてきたファッションのオタク化

少し前の話になるが、いつもこの時期、つまり1月はメンズのトレードショーや「WHO’SNEXT(フーズネクスト)」とともに、ほぼ同時期に開催(1月17~21日)される「MAISON ET OBJET(メゾン・エ・オブジェ)」(以下メゾン)にも足を運ぶ。なぜなら9月は下旬のセカンドセッション取材で渡仏するため、初旬のフーズネクストとメゾンまでは、カバーできない為だ。

そして、いつも思うのだが、ファッションのトレードショーよりメゾンの方が、はるかに賑わっている。もちろん出展者数やブースの大きさも桁違いにデカいのだが、それにしても来場者でごった返している感じは、羨ましく思っていた。因みにメンズ・トレードショーの合算出展者数が310、フーズネクストが約1500なのに対して、メゾンは2736だ。ただ、今回は少し通路にも余裕があったので、もしかしたら来場者数が減ったのでは?と思っていたら、やはり主催者から3.5%減との報告が届いた。にしても、にしてもだ。ファッションのトレードショーよりは、はるかに多く見えるのだ。実数で81232人、延べで123836人だそうで、海外からは中国が4位(1305人)とアジアではトップ。日本は10位以内にも入っていないらしい。この時期は、まだ新型コロナウィルス問題が大きくなる前だったので、こういう結果となったのだろう。

アルチザン(職人)やアート寄りの多いクラフトゾーンは見応えがある。

さて、個人的にはセレクトショップやデザイナーズの視点で見る訳だから、それに相応しいと感じるファッション雑貨は、せいぜいクラフトゾーンにしか見当たらない。アパレルはほぼ対象外だ。誤解を招くといけないので、ここで言う私のファッションという言葉は、デザイナーズやモードと言われる分野のアパレルを差しているので悪しからず。

こうして見えてきたのが、ファッションのオタク化(=サブカル化)だ。先進国になるまでは、衣食住の衣は、手軽に安価に自己表現できるものとして重宝されてきた。しかし、先進国になると、食住へと自己表現の手段が広がり(広げる余裕ができ)、こうしたメゾンのようなインテリア・ライフスタイル見本市が活況を呈してくるのでは?。だから、今のファッションのトレードショーは、新興国、つまりはアジアやロシア、東欧などのバイイング熱が凄いのでは?と思うのだ。これらの国では、まだ自己表現、自己実現欲求の道具としてのファッションが有効だからだ。

そして先進国では、もはやファッションは、その役割を終え、一部のファッションフリーク(オタク)の為のサブカルチャーとなってしまっているのではなかろうか。ある一定の富裕層とオタクしか買わないファッション(モード)。だから来場者が少なくても仕方ないのだ。もちろんECやSPAがトレードショーに及ぼしている影響も少なくないことは、拙稿に何度も書いているので、あえてここでは触れまい。

記事とは直接関係ないが、訪れたブースの一部を紹介する。

伊藤忠ファッションシステムがサポートしていた「365日-a day in japan」ブース

ソックスの「Bonne Maison(ボンヌ・メゾン)」は、プルミエールクラス出展を止めて、メゾンに集中。この種の服飾雑貨は、メゾンの方がより幅広いジャンルの店に販売できるだろう。

高田賢三が新たに立ち上げたインテリアブランド「K三(ケイスリー)」がブース出展