久保 雅裕

2020 23 Aug

あの膨大なライセンス商品の理由が分かる 映画『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』

ピエール・クールシャル(左)とカルダン(右)
革新的な未来派デザイナー、ピエール・カルダンのドキュメンタリー映画が公開される。
筆者は今年2月、パリファッションウイーク中にサントノーレ通りの「ステュディオ・ピエール・カルダン」で開かれたレセプションパーティーに出向いた。98歳になるカルダン氏がピエール・クールシャルとともに、元気にロイターの取材を受けていた姿が目に焼き付いている。カルダン氏を見るのは、これが初めてのことで、結構、興奮したのを覚えている。

2月のステュディオ・ピエール・カルダンにて
2000年代(最近はテン年代と呼ぶそうだが)、「ランデヴー」というトレードショーがエスパス・ピエールカルダンで開かれていたことも思い出す。メトロのコンコルド駅から5分ほどのところにあり、シャンゼリゼ大通りにも近く、木立に囲まれた瀟洒なスペースだった。この劇場にかけるカルダンの強い思いも映画から知ることができた。
とは言え、ブランドの「ピエール・カルダン」と言えば、日本においてはスリッパから便座カバーまで、ありとあらゆるライセンス商品で溢れていたことを思い出さない人は居ないだろう。もちろん一定の年齢以上の人たちだが。何故にカルダンは、ここまでライセンス拡大に拘ったのか。その理由もこの映画を観れば、謎解きができる。
そして、やや小馬鹿にしていたかもしれないピエール・カルダンというブランドの背後に居る人間カルダンの実像を知るにつけ、その先入観がガラガラと崩れていき、この人の凄みに圧倒されることになるだろう。

以下全て©House of Cardin - The Ebersole Hughes Company
一般的には、オートクチュールからプレタポルテへとファッションの大衆化を図った先駆者であり、未来的で宇宙的な円形を多用するファッションデザイナーというのが、大方の見方なのだろう。だが、カルダンの凄さは、何と言っても徹底的に仕事に集中し、常に前に進むことだけに執着してきたことに尽きる。その炎のような情熱が、100歳を迎えようという齢になっても、ちっとも衰えていないように見えるから、ある意味「化け物」だとも言える。


マキシムへのリベンジの逸話なども面白過ぎて、ワクワクさせてくれる。

P.デビッド・エバーソール(左)とトッド・ヒューズ(右)
今でなければ撮れない貴重なカルダンの言葉、動き、思い出を語る映像を見事に収めた監督・プロデューサーのP.デビッド・エバーソールとトッド・ヒューズの着眼点にも興味が湧いた。恐らくこの作品の主要なテーマは「ダイバーシティー」だ。そんな事を思っていたら、米国カリフォルニア州・パームスプリングスに居る両名と独占インタビューが叶った。その内容は、USEN『encoremode』で映像配信を行う予定だ。是非チェックしてみてほしい。

ナオミ・キャンベル
映画は見れば納得、カルダンの凄さが分かるので、是非とも劇場へ。映画『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』は、10月2日よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開予定。