久保 雅裕

2020 28 Mar

自粛要請への対応マチマチ

昨秋オープンしたばかりの渋谷パルコ(※本文とは関係ありません)

<前の投稿の最後に記したパラダイムシフトについては、次稿に譲るとして、その前に>

今週末、首都圏は外出自粛要請に対応して、商業施設の一部が休館を決めた。渋谷109が真っ先に閉店を告知。ルミネやラフォーレ原宿、パルコ、丸井など比較的若年層を顧客に持つ商業施設が続いた。百貨店では、いち早く休業を決めたのが高島屋。だが営業時間の短縮や食品フロアのみで営業継続を決めた百貨店もあった。理由の一つに「市民にとって重要なインフラ」だそうだ。

さてオーバーシュート間近と言われる中、このように足並みが揃わないのは、資本主義社会だから仕方がない。営利追求とCSR(企業の社会的責任)の狭間で、その決断はあくまでもその企業の自由意思に委ねられている。同様に自粛要請でもロックダウンにしても、個人の自主的な意思に任されている訳で拘束力は無い。欧米との大きな差を感じる人も多いだろう。

随分前から、同じようなことを感じていたのが、セール時期の問題だ。「同じものを売っている商業施設同士なら早く始めた方が得だ」とばかりに、まだプロパーで売れるはずのものをマークダウンしてしまう。これだけ夏が長く、冬が短くなり、さらに適時が遅くなってきている気候変動の状態なのだから、気温に合わせて、もっと後ろ倒しにしても良いのではなかろうか。サステイナブルな生産と消費の健全化の方が独禁法より優先されるのではなかろうか。

フランスでは、法律でSOLDES(セール)の開始日が決められており、違反すれば罰せられる。日本では立法化は難しいとしても、業界が一つにまとまって、セール開始時期を後ろ倒しすることで、気候の実態に合わせた販売スケジュールへと舵を切り、適時適品適量の販売により業界のサステイナブルを推し進めていくことを望みたい。

この週末の自粛要請の話に戻るが、欧米のロックダウンの様相は絵空事ではない。「日本の近未来の姿かもしれない」と想像力を働かせるなら、「自粛によって人が出歩かない」→「開店効果は薄いし、自粛ムードに水を差す」→「であるなら一体的に閉店すべき」という選択の方が賢明だったと思う。ただし、補償を担保できない腰抜け政権の中途半端な自粛要請のため、危機感も共有できない国民が生まれているのだから、責められるべきは小売業ではなく、無能な為政者たちだと断じておく。

強制的ロックダウンの補償をいち早く発している欧米政府の腹の括り方と比べて、「お肉券」とか「お魚券」とか、まだ先の話の「旅行クーポン」(旅行会社通さないともらえない)などと族議員の票田対策が飛び出てくるバカバカしさには呆れてものも言えなかった。