久保 雅裕

2019 22 Sep

ミスターNHK・磯村さんとシンポジウムに参加

TMF日仏メディア交流協会という組織をご存じだろうか? あのミスターNHKと言われた磯村尚徳さんが会長を務める会で、メディア関係者やフランスに所縁のある方々が多く加盟している団体だ。年に数回、講演会やシンポジウムなどを日仏会館で開催しており、先般「第7回たそがれ時の談話室・日本の若者にとってフランス留学とは?」と題したテーマに登壇する機会をいただいた。この「たそがれ時の談話室」と銘打った企画は、高い壇上からでなく、フラットな会場で登壇者と聴講者が意見交換などもしながら進められるという趣旨の会だ。司会を磯村会長が務めるのだが、この方と同じ土俵でまみえることができるとは感無量。90歳という年齢を全く感じさせない滑舌の良いトークと流暢な英語、フランス語も交えたそつない進行には参った。

さて、今回の登壇者は、エルメスジャポンの元広報部長で明治大学特任講師の東野香代子さんとフランス政府留学局・日本支局の橋本妙子さんに私の3人で、東野さんは学生のパリ短期研修の話を、橋本さんは現在のフランス留学の実態について、それぞれ報告された。

私はというと、杉野服飾大学生のパリ研修旅行の実際、さらに同時多発テロやジレジョーヌ(黄色いベスト)運動の影響などについて発言した。

ちなみに各国の海外留学の状況は、2011年の統計で中国がダントツの72万人、続いて米国28万人、インド22万人、韓国14万人なのに対して、日本は5.7万人という数字だ。人口比で考えると韓国は日本の4倍という事になるが、国内不況で就職困難な韓国の特殊事情もありそうだ。日本のピークは2004年の8.3万人で、これ以降漸減している。

こうした中で実はフランス留学する学生は減っていないらしい。むしろ米国や英国など授業料や生活費の高い国への留学の減少が著しいそうだ。まだフランスは物価もそれらの都市ほど高くなく、また学費も抑えられている点が利点としてあげられる。

深刻なのは、近年アンケート調査で一番のハードルとなっている経済的な問題で留学を諦めるというケース。さらに就職で不利になるという点も理由として続いている。就職については、企業側の理解も必要となってくるが、独仏など欧州大陸の学費は総じて安いという事があり、その点ではアドバンテージがあるのだが、マイナー言語の弱みはある。やはり共通言語である英語圏には水をあけられるだろう。

そんな話を繰り広げていると、あっという間の1時間半が過ぎ去った。その後、簡単な交流会も開かれた。

次回は11月8日18:30から日仏会館で、「冷戦終結はいったい何だったのか? 30年を振り返る」と題して、朝日新聞編集委員の大野博人氏、NHKインターナショナル専務理事の長崎泰裕氏がパネラーとして登壇する予定。興味のある方は、TMF日仏メディア交流協会事務局(info@tmf.cc)まで。