久保 雅裕
2023
13
Nov
『開拓者たち』『ペルシアンバージョン』に注目~第36回東京国際映画祭
©️Quijote Films and Rei Cine
今回の東京国際映画祭で注目した作品はまず、『開拓者たち』。20世紀初頭のチリの田舎で起こり、長く伏せられていた事実「原住民虐殺」を題材に扱った作品だ。植民地支配の凄惨さはもちろんのこと、宗主国のスペインだけでなく英国、米国からも、その利権目当てに潜り込んできていた史実など、まるで今のイスラエル・パレスチナ問題と軌を一にする列強大国の責任の重大さと原因が浮き彫りになってくる。そんな19世紀後半からの現先進資本主義国の罪をしっかりと後世に伝えていかねばならないと痛感する。
もう一つの注目作品は『ペルシアンバージョン』だ。米国と友好国だったイランから移民した一家が、その後の2国間の関係悪化に伴い、自身のアイデンティティーを喪失し、翻弄されながらも家族としてハッピーに過ごしていくストーリー。あまりにもざっくりとした説明になってしまったが、家族の中でもやんちゃな娘が主人公。彼女は同性愛者なのだが、お転婆が過ぎて、飲み過ぎた勢いで妊娠!!。ところどころにミュージカル風演出が入り、シンディーローパー『girls just want to have fun』のアラビア語バージョンも楽しい。歴史に翻弄されつつも、コメディータッチの中に、少しの曙光を感じられる作品だ。お茶でも飲みながら楽しめる一作。
©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics.©Sony Pictures
そんなこんなで、繁忙極める中で、以前のように、どっぷり1週間映画漬けにはなれなかった今年。「来年こそは、しっかり時間作って観るぞ」と誓って終了。