久保 雅裕

2019 11 Feb

見倒して見つけたスペインのアクセサリー「SABINA VARGAS」

「大型のトレードショーに行っても、良いものが見つけられない」「いつも同じブランドばかりで新鮮味に欠ける」。そんな声をここ数年、バイヤー達から聞き続けている。だが、あるセレクトショップのベテラン・オーナーバイヤーは、足繁くトレードショーに通い続け、多くのブースで商談する姿を見掛けてきた。彼曰く「ブランドをたくさん見て、会場を隈なく回ってみれば、良いものは見つけられるものですよ。『着倒す』という言葉がありますが、僕は『見倒す』です」とダジャレともつかない言葉を発していた。

今回、パリの大型見本市「フーズネクスト(WHO’S NEXT)」を回っていて、「なるほど1000社も出ていれば、それなりの物も見つかるものだ」と感じた次第だ。

さて今回見つけた掘り出し物は、スペインから出展した革の編み込み組紐のリング「サビーナ・バルガス(SABINA VARGAS)」だ。もともとアンダルシア地方・カディス県のウブリケは皮革製品の産地として知られ、ラグジュアリーブランドの製品を作ってきた歴史的も有名なところ。サビーナ・バルガスは、そこで伝統的な技術をコンテンポラリーに生かしたアクセサリーに仕上げた。さまざまな色の革組紐を手編みしたリングのヘッド部分とステイ部分を取り外すことが可能なため、付け替えて楽しめるリングとなっている。また取り付けるナットもカラフルな多色展開で、さらにカスタマイズ感が高まるという訳だ。箱型のパッケージもトリコロールカラーのマリンテーストやシックでナチュラルなザラ紙に箔で型押ししたもの、緑、黄、赤、黒のシルエットがプリントされた表紙や黒地に赤、黄のポロック風ペイントが施されたアーティスティックなものまでバリエーションが豊富だ。服飾雑貨のゾーンに4㎡ほどの小さなブースを構えていたが、うっかりすると見落としてしまうかもしれない。全会場を隈なく回るのは大変な労力が必要なのだが、こうした新しいブランドとの出会いがあると、「ワクワク感」で疲れも吹っ飛んでいく。まさにトレードショーの醍醐味と言えよう。

90年代半ばからパリの展示会に来るようになったのだが、当時まだフーズネクストが小さなトレードショーとしてスタートしたばかりの頃、このポルト・ド・ベルサイユ見本市会場では、メンズ見本市の「セム(SEHM)」や「プレタポルテ・パリ(PAPP)」が巨大見本市として隆盛を誇っていた。「栄枯盛衰」「盛者必衰の理をあらはす」とはこの事だと痛感し、会場をあとにした。