久保 雅裕

2020 01 Jul

7時間時差の国でも簡単にウェビナー

先日、とあるヨーロッパの州政府の依頼でウェビナーの講師を務めた。20年ほど前には、よくあちらこちらの欧州都市を回り、「日本のファッション市場」に関するセミナーで講師をしてきたが、コロナ禍によって、リモート化が加速し、いとも簡単に現地セミナーが開けてしまう時代となった。全くもって感無量だ。出張経費も掛からず、体も移動せず疲れ知らずで、なんと手軽なことだろう。唯一面倒なのは時差くらいか? 今回も7時間の時差があったので、16時30分にスタンバイし、音声通信テストをした後、17時からセミナー開始。現地は午前10時スタートだ。現地の事務所長の挨拶と日本国内の州政府事務所の「日本国内のCOVID-19の状況報告」などがあり、17時20分から18時50分まで、ほぼ1時間半逐次通訳とスライドショーで講演を行なった。その後20分ほどの質疑応答があり、19時15分に終了となった。スタンバイからほぼ3時間の拘束だが、12時間以上のフライトも時差ボケもなく、なんと楽チンなことか!
閑話休題。やはり日本のマーケットに対する誤解や知識不足は、以前とほとんど変わらないような気がする。随分多くの外国人が日本を訪れるようになったとは言え、欧州の地方に住んで、ブランドを作り、あるいは工場を営んでいる人たちにとって、日本はまだまだ未知の国なのだ。かつて日本でも成功を収めた自国のブランドの噂話だけは、しっかりと耳に入っており、「自分たちも日本へ行けば、それなりに売れるのでは」と勘違いしているフシがあるのだ。
逆に筆者の友人の知日派業界人は、皆「日本は特殊な難しい市場だ」と口を揃える。知れば知るほど、その難しさが分かってくるようだ。
では、そのポイントは何なのか。キーワードは、「慎重」「細かい」「品質にうるさい」「忖度」といったところか。すなわち、慎重なので、簡単には手を出さず、すぐには買わないし、オーダーが小さいわりに納期やディテールに細かい注文を付けてくるし、「これでB品」と普通、欧州では通ってしまうようなものまでクレームを付けてくる。痒い所に手が届くのが日本の文化ということらしい。逆に言うと、ヨーロッパ、とくにラテン系は、このキーワードの真逆と言える。気に入ったらバーンと買って、納期は最近多少うるさくなったが、日本ほどではなく、はっきりものを言わないと通じなくて、もちろん忖度なんてしてくれない。
そんなことまで解説していると、日本人のいやらしさばかりが際立ってしまうのだが、「そこを乗り越えたら、支払いも良く、長い付き合いができる相手なんだよ」とフォローも言ってみたりする。
まだまだ克服しなければならない相互不理解があり、「こりゃあ、私の仕事は無くならないわ~(^-^;」と少し安心した今日この頃。