久保 雅裕
高知に「モネの庭」があるってご存知ですか?
ちょうどチューリップが咲き誇っていた
再現された池は、まだ睡蓮の季節ではなかった(4~6月が見頃だそう)
過日、高知県にある「北川村『モネの庭』マルモッタン」を訪ねた。ここはフランスのクロード・モネ財団と提携していて、ジヴェルニーにあるモネが住み、こよなく愛した睡蓮の池や橋、家と庭などを再現した施設だ。なんと世界に一つしかないモネ財団の公認施設だという。オープンは2000年なので、20年の歴史を持つのだが、その来館者はほとんどが四国からだそうで、年間7万人が訪れる。
再現されたモネの家
ホームページにあるステートメントには「北川村『モネの庭』マルモッタンは、印象派の巨匠クロード・モネが43歳から生涯の半分を過ごした、フランス・ジヴェルニーで丹誠込めて作り上げた〈モネの庭〉を再現した庭として2000年に開園しました。1999年以前、北川村は新しい道を探していました。北川村の更なる発展のために、工業団地誘致という構想から180度の方向転回をし、多くの障害を乗り越えて、フランス・ジヴェルニーとの交流が生まれ、奇跡の北川村〈モネの庭〉作りへとつながりました。そして、1999年。アカデミー・デ・ボザール終身書記アルノー・ドートリヴ氏から、それまでは門外不出であった〈モネの庭〉の名称をいただく事となったのです。しかし満足できる庭作りの為には、その後もいくつもの新たなハードルを越えていかなくてはなりませんでした。そこには、本家モネの庭の庭園管理責任者であるジルベール・ヴァエ氏のアドバイス無くしては現在のモネの庭になることはできませんでした。北川村『モネの庭』マルモッタンでは、環境問題についても取り組んでいます。極力、農薬など使わず、人のチカラで病虫害から花・木を守ることで次世代に悪影響を残さないように努めています。また地域への貢献を深め、地域とともに発展していく場所として、教育や地域産業への取り組みも進めています。クロード・モネが愛し育んだ思いを胸に、手をかけ作り上げた北川村『モネの庭』マルモッタン。ここで過ごされる時間が、皆様にとって華やいだり、安らいだり、素晴らしい思い出となれば幸いです。私たちも花や庭の美しさに負けない接客で快適にお過ごしいただけるよう心がけ、皆様をお迎えしてまいります。」と述べられている。実際にフランスの庭師が来日して、指導されているそうだ。
2009年に訪れたジヴェルニーのモネの家
筆者が本家ジヴェルニーのモネの庭を訪ねたのは、2009年の事。モネが暮らした家の廊下や階段に所狭しと浮世絵の数々が掛けられていたのを思い出す。欧州を席巻した「ジャポニスム」のブームは19世紀、特に1867年のパリ万博で大きく広まった。日本の浮世絵が、印象派の画家たちに影響を与えたのは有名な話だが、その浮世絵の価値を軽んじた日本人から容易く手に入れたヨーロッパの人たちの先見の明には頭が下がる。歌麿や北斎など貴重な文化財が散逸、消滅しないで済んだのも、彼らのようなヨーロッパの芸術家や画商たちの功績かもしれない。
さてフランス・モネ財団公認の施設が世界に唯一、日本の高知にあるというのも不思議な縁だ。「地域創生プロジェクト」として立ち上がった企画から、「アポなし」でのジヴェルニー訪問&門前払いに始まり、口説き落としたというから面白い。結果としてジヴェルニー以外には世界に一つしかないモネ財団公認「モネの庭」となった訳だが、前述のように意外と全国にはあまり知られていないのである。フランスが「第二の故郷」のような筆者としては、日本の浮世絵とフランス文化の繋がりを生かしつつ、もっと多くの人に訪れてほしいと思った次第である。
2009年に訪れたジヴェルニーの池