久保 雅裕

2019 11 Jul

ウェルカムエディションが存在感を高めていたパリのトレードショー

WELCOME EDITION

パリメンズファッションウイーク中に第4回「ウェルカムエディション」が開かれた。ショールームという名の実質的にはトレードショーだ。パリのトレードショーは、カプセル・パリを含めて3つあった5年前と比べて、トラノイとマン/ウーマンのみの2大トレードショーの総出展者数がなんと4掛け、つまり60%減となった。これについては、『encoremode』に詳述しているので、そちらを見てほしい。カプセル・パリが小規模になってカプセル・マレを開いたのが18年秋冬シーズンで、行き場を失った出展者は、ジャケットリクワイヤードのメンバーが立ち上げた「レジデントショールーム」へ。しかし、同展は、3シーズンで止めてしまい、ウェルカムエディションが受け皿となっていったのだろう。

ただウェルカムエディションを総出展者数に足したとしても、5年前と比べて半減という冷酷な結果となった。

WELCOME EDITION

ウェルカムエディションは、ヘリテージ系やクラフト系のブランドを集め、少し外れのメトロ・ゴンクール駅、ペールラシェーズ駅から徒歩8分という、行きにくい立地で、コージーな感じで開いている。

トレードショーは、本来まだ取引先の無い、もしくは少ない新進や小さなブランドが、ショールームほどの高価な投資をせずに多くのバイヤーと出会える場所であらねばならない。しかし、マンも以前のリパブリック広場近くのチープな会場から立派なヴァンドーム広場のホールへと移転し、出展料もうなぎのぼりだった。これでは、小さなブランドにとっては継続的に出展することもままならず、結果的には面白い小さなブランドが集まらなくなってくる。そういう意味では、比較的成長を遂げてきたマンも出展者数が頭打ちの様相だ。トラノイに至ってはこの5年間で77%減という厳しい局面に立たされている。

見る側からすると、ショールームは、ゆったりと見られるという点で利があるのは分かるのだが、一方で出向く場所が増え、周り切れなくなるという難点も抱えている。できるならトレードショーで全てとは言わないまでも、たくさんの新進ブランドを見たいというのが本音だ。そういう意味では、トレードショー側の出展コストの削減努力も必要だし、ウェルカムエディションのような新規トレードショーが出現してくるのは、大変有り難いことなのだ。

さらにキューブやポリーキングのように契約しているブランド以外に対して、スペース売りでセールスフォローの無い実質的にはトレードショーと同じ条件と機能を併せ持ったショールームも出てきている。こうした新たなアプローチ手法もトレードショーの沈滞化に繋がったのだろう。

ただ強くないブランドが、いくらショールームに入ったところで、結果は五十歩百歩なのだろうと思うが。