久保 雅裕
狩猟民族の方が一枚上手
4月16日に『ファッションスナップ・ドットコム』からの依頼で寄稿した【コロナ後:トレードショー編】「合同展が軒並み中止...今こそ正すべきファッションサイクル」が掲載されて、早ひと月となる。
7月のロンドン「ジャケットリクァイヤード」、8月コペンハーゲン「CIFF」も未だキャンセルとはなっていない。7~8月の欧州のファッションイベントが実施できるかは、予断を許さないのだが、さらにその先9月にも暗雲が立ちこめてきている。イタリアの「ピッティ・ウオモ」や「ミカム」、フランスの「メゾン・エ・オブジェ」や「フーズネクスト」さらにはメインとなるウィメンズのファッションウイークの実現の可否にも注目が集まっている。イタリア、フランスにおける封鎖解除後の第2波、第3波の危険もあり、主催者側としては直前での中止の判断もあり得るわけだ。そうなると必然的に海外からの出張組は躊躇し、決定がギリギリになり、早くから予定を決めたがる日本人のDNAからすると、来春夏のリアルな買い付け出張も厳しくなりそうだ。
そんな中でオンラインによる受発注と出会いの場として、いくつかのプラットフォームが取り上げられている。「プレミアム・ベルリン」は「JOOR」と、パリのオートクチュール・モード連盟(通称・サンディカ)が主催する若手合同展「スフィア」は「Le New Black」とパートナーシップを組んだ。さらにはオンライントレードショーをもともと母体として立ち上がるパリ・メンズの「VIEW」とウィメンズの「playologie」なども15000人規模の世界のバイヤーデータを基礎に年内無料でのブランド登録を進めている。
国内を見てみると、特定警戒都道府県の主要エリアの緊急事態宣言解除は、少し先になりそうだが、地方都市や東京でも一部ショッピングセンターがファッション分野も含めた時短営業を開始した。個展や小規模ショールームなどでは、完全アポイント制での開催を来週から始めるところも出てきた。規模感の大きな合同展としては、9月はじめの「ルームス」や「プロジェクト・トーキョー」が既に開催を発表している。ただ、これもその時点になってみないと誰もが分からないというのが本音だ。それはフランスでも「5000人以上のイベントは9月まで禁止」とされているにも関わらず、ファッションウイークとその時期のトレードショーについては、いまだ中止の決定がなされていない事が如実に示している。中止か開催かの判断は、概ね1~2ヶ月前となるだろうが、波の高まりと収束、つまり山を登っていく時にあるのか、それとも谷間にあるのかのタイミング次第というのが判断基準となる。
筆者の主宰する「ソレイユトーキョー」も8月末の実施を目指しているが、幸いにして「3密」を避けられるシステムのため、何とか実施にこぎつけたいと考えている。だが、これも谷間でなければ難しい判断を迫られることになるだろう。
いずれにしても即断即決。もたもたし、怯むなど隙があると、禍根を残すことになる。その点は狩猟民族の方が一枚上手な気がする。