久保 雅裕
「存在が意識を規定する」(前編)~設楽洋ビームス社長、三原康裕デザイナー、シップス鈴木晴生顧問の場合
初回のゲストはビームス設楽洋社長(中)、アシスタントの石田紗英子さん(左)と筆者(右)
「存在が意識を規定する」というあまりにも有名なカール・マルクスの言葉があるが、それはあくまでも土台(経済)の上にある政治や宗教、文化との関係を指しており、社会的存在が社会的意識を規定していることを述べている。それを安易に環境に影響されて意識が規定されているかの如く使うのは正確ではない。だが人は間違いなく、環境に影響され、人生左右されていることは否定できないだろう。
今年8月から始めたSMART USENのアプリラジオ番組「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」では、月1回更新でゲストとトークを繰り広げてきたが、来年1月で半年、6人の収録が終わった。彼らの職業選択に親の仕事や態度がどれほど影響を与えてきたのか。昔話の中から拾ってみた。
まずは第1回のビームス・設楽洋社長の場合、実家の家業は段ボール会社だが、父親が物を工作したりするなどクリエーティブな側面を持っていたと話していた。そしてオイルショックの影響で紙の値段が上がる中、別事業としてアメリカンライフショップ「ビームス」を始めている。家業を継いだ訳だから、その影響はある意味そのまま受けているといっても過言ではないだろう。
続いて2回目、「メゾン・ミハラヤスヒロ」の三原康裕デザイナーは、母親が芸術家だったという点がもっとも影響しているのではなかろうか。幼少期から自由に育てられ、絵を描いたり、プラモデル作りに没頭したりという子供だったらしい。そして多摩美術大学に進学する訳だから、血筋と言っても良いだろう。
3回目のゲスト、シップスの鈴木晴生顧問に至っては、GHQで働いていた英語堪能な父のもとでアメリカから届くモノと空気に溢れる幼少期を送っている。家には「シアーズローバック」のカタログがあり、丸い冷蔵庫もあるし、ワッフルを焼く鉄板もある。映画も早くから影響を与えたそうで「児童心理学で言われている、関わっている時間の長さによって、その人の人生にいろいろな影響を及ぼす」ということを率直に感じていると話していた。
<森永邦彦デザイナー、マッシュホールディングス近藤広幸社長、ビームス青野賢一クリエイティブディレクターの場合⇒来年1月の後編に続く>