久保 雅裕
メゾン・エ・オブジェも中止に! 猫も杓子もデジタル化
今年1月のメゾン・エ・オブジェ
昨晩、パリの友人から「メゾン・エ・オブジェ」の9月展中止が決まったと連絡が来た。その後しばらくして、オフィシャルのTwitterを見ていたら、公式発表が流された。ピッティイマジネ社の9月展も軒並み中止が決まったばかりだったので、「早晩、メゾンも」と思っていたが、やはり出展社集めは厳しかったに違いない。同時期という事では、「フーズネクスト」も危ぶまれる。
さらにさらに、9月末のパリのトレードショーやコレクションも、今月末までには何らかのアナウンスがあるだろう。準備期間を考えると3ヶ月前がジャッジの限界だ。
大規模イベントだけに、リスクが大きいというのが一番だが、では個展やショールームは、どうなるのか。とりあえずシェンゲン協定域内からのバイヤーは呼べると期待して開催する方向で動いているようだ。日本で、国内バイヤー相手にショールームを開くのと同じ感覚なのだろう。それ以外の地域は、14日間隔離措置の解除が確定し、かつ第2波と被らないことが前提条件となる。
さて、そんな中で各トレードショーはデジタルプラットフォームを活用する意向を大々的に表明している。メゾン・エ・オブジェは、同社の「MOM」を使ってサポートしていくとしており、ピッティイマジネ社も「Pitti Connect」を6月末にローンチすると述べている。さらにパリでは「VIEW(ヴュー)」というリアルとデジタルのプラットフォームも生まれている。ここまでは、あくまで独自路線の姿勢だ。
しかし、ドイツ・ベルリンの「PREMIUM(プレミアム)」と「SEEK(シーク)」は、世界最大手のB2Bマーケットプレイス「JOOR(ジョア)」と連携してデジタルトレードショー「PREMIUM+ SEEK Passport(プレミアム+シーク・パスポート)」を7月14日から開催する。フランスオートクチュール・モード連盟は、若手合同展の「スフィア」でデジタルショールームの「LE NEW BLACK(ル・ニュー・ブラック)」を活用するとしている。
一方で、各地のトレードショーとは一線を画すデジタルショールームの活用も進んでいる。
これら様々なプラットフォームの中で、ジョアは伊藤忠商事が日本の代理店になったことで、大きく浸透する可能性が高まった。パリで6月に開く予定だった「東京ファッションアワード」の「showroom tokyo(ショールームトーキョー)」は、ジョアを活用してデジタルでの開催を進めているようだ。これはショールームトーキョーの委託先が伊藤忠ファッションシステムなので、「言わずもがな」な気がする。
リアルなハブとしてのパリは健在なのだろうが、やはり、こうした事態の下ではデジタルに譲るしか手は無さそうだ。そうなるとパリの地盤沈下は避けられない。先に述べた個展やショールームも、果たして集客がどこまで見込めるのか。皆目見当つかないのが現実だ。
「リアルの重要性を睨みながらも、デジタルで凌ぐ」。これが、これから2年くらいのスタンスになるのではなかろうか。
当然、筆者が主宰する合同展「SOLEIL TOKYO(ソレイユトーキョー)」も7月からオンラインプラットフォームをローンチし、海外ブランドも含め、デジタルで出会いの場を提供する。さらにオンライン受発注システムを提供する「FOR SEE(フォーシー)」と提携し、「SOLEIL TOKYO ONLINE(ソレイユトーキョー・オンライン)」でつながったバイヤーとフォーシーを運用して、受発注までデジタルで行える流れを確立する予定だ。
「猫も杓子もデジタル化」だが、こればかりは今回のコロナ禍で一気に加速された最たる事例と言えるだろう。