北川美智子
テキスタイルウォッチング 気になる素材展 1
10月は素材各社、各団体、グループ、産地の素材展が行われました。
総合展としてはJFW Japan Creation・Premium Textile Japan 2023 AWがあり、重複して参加するところもあります。
今回は特殊性のある高野口産地と進化しつつある尾州産地の様子をお伝えします。
高野口産地 18回 PUWAPUWA 展
パイルファブリックの総合展示会「ぷわぷわ」展が10月12~14日の3日間墨田区横網のKFCホールアネックスで行われました。
当産地は明治時代にスタートしたシニール織りを契機に織りや編みによるパイルファブリックの総合的生産地として歴史を積み上げてきました。
プワプワ展は18回目を迎え素材も多様化しましたが、衣服にもインテリアや寝装産業資材としても堅実な進歩を遂げ、特に新幹線をはじめ各鉄道車両や車のシート、国会議事堂の椅子、毛布やフェイクファー、縫いぐるみ、ベルベットやコーデュロイなど身の回りで目にしたり、身に着けているものが多く親しみを感じます。
妙中パイル織物(株)
同社ではテレビでよく目にする国会議事堂の椅子に使われるモケットを生産していることで知られているが、そのほかにジャケットやドレスに使うジャカードパイル、肌のように柔らかく化粧パフに使うシールなど各種実績を積んできた。
素材の持つ高級感や滑らかさ、艶や染色技術など安定した供給で定評がある。
「Taenaka No Nuno」として製品に発展させたポーチやバッグ類が興味をそそった。
古典的であり、モダンでもあるジャカードパイルはインテリアのイメージが強く固くしっかりとした印象を受けるが、手にすると意外にソフトで肌にも馴染みやすい特徴がある。
ベルベットをもっと楽しく高級感を付加したような、それでいて素材としての安定感もありオシャレで上品な日常使いのバッグに適している。
丈夫さを売りにしたナイロンや塩ビ、レザータイプとは異なりヨーロッパ調でありながらどこか日本の絣やほぐしに似た繊細さがあり布の価値観が感じられる。
普段使いの商品として決して安くはないが、布の価値を感じさせる商品としてのデザインが整えば市場での需要が更に上がるだろう。最終用途の商品力に期待したい。
そのほか重厚さを演出するステンレス入りのベルベット、表デニム裏ファータイプの二重織風温かデニム、緻密さ、柔らかさが売りの資材用のポリエステルベルベットなど得意とする素材が産地の枠を超えたコラボレーションに繋がり、新機能の備わった新しい素材や製品への期待が高まっている。
URL:http://www.taenaka.com
http://taenakanonuno.storeinfo.jp
野上織物(株)
再織りともいわれるシニール織物は手の込んだ美しい高級パイル織りとして注目されている。
市場ではドイツのフィエラー社が有名ではあるが国産のシニール織りは明治10年に土台となるものがスタートしたがその後途絶え、昭和61年以降に様々な技術開発を重ね新しくモダンな再織りが出来上がった。
同社ではファッション雑貨、タオル、寝装、インテリアなど国内生産によるキメ細かなオリジナル商品作りに対応している。
素材は綿、麻、ウール、アルパカ、シルクなど多岐にわたる。
両面パイル、二重から五重の多層ガーゼのふんわりした柔らかなタッチが独特。
アックリルとmodacryleのファータイプやポリエステル100%の細いテープ状の房など特殊技術が使われたものや縦ポリエステル、横コットンのフリースなども市場性が期待される。
URL:http://www.nogami-pile.com
松岡織物(株)
ファーやボアが主製品。比較的薄く柔らかでスポーツやカジュアルウエアに使いやすい。
コットンのグランドに表がアクリルのボア、グランド、表共にソロテックス使いの薄手ファーは柔らかく手持ち感が良い。
グランドにコットン・レーヨン、表レーヨンの生地にカラフルプリントを施し薄くて柔らかなベルベットタイプ、布とファーのボンディング、コットンとウールのダブルフェイスなど、今市場でも注目されている素材が充実している。
URL:https://www.maysuoka-orimono.com
参加は10社
青野パイル(株) 井脇織物(株) (株)岡田織物 杉村繊維工業(株)
妙中パイル織物(株) (株)日本ハイパイル 野上織物(株) 原田織物(株)
松岡織物(株) 山下パイル(有)
主催 紀州繊維工業協同組合 http://www.koyaguchi.com