北川美智子
Premiere Vision 2019-20 A/W のポイント
シーズンの方向性を探る素材展として最も発信力の高いP/V展ですが、その内容の濃さや莫大な素材数から求める答えを得るのがなかなか難しいように思います。
P/V展を訪れるバイヤーの目的は参加各社のブースでの新製品の情報を得たりバイイングビジネスのスタートを切ることと、会場内の大きなスペースを使って示されるシーズントレンドのためのプレゼンテーションからたくさんの情報を得ることでしょう。
展示フォーラムで目にし、実際に手で触れスワッチに書かれたファクトリー名をトレースして訪れる人も少なくありません。
往々にしてフォーラムに並んだ素材はさまざまな新アイディアが盛り込まれた魅力的なものが多く、実際に使うとなると価格や生産のタイミングが合わないものもあって見る楽しみだけで終わることになりがちですが、そこから得るイメージの広がりやクリエーションへの刺激は計り知れません。
この2か月P/Vの内容を詳しくお伝えしましたが、登場するテーマやくくり、キーワードが重なったり正反対のものがあったり、理解しにくい場面が沢山ありました。
今回は偏見も含み特に重要と思われる点を簡単にまとめてみたいと思います。
ビジュアルはこれまでのものをご参照ください。
・「Cloud of Fashion」という全体を総括する大きなキーワードのもと全体のデジタル思考がますます高まっている。
・「サスティナブル」や「ダイバーシティ」という時代のキーワードが大きく作用し、自然に対する新たな考え方が打ち出されている。
・スポーツがモードと融合。その橋渡しになるのが機能性。
・新たな技術による新しい表情の素材が次々と生まれているが、その土台になっているものは今までのベーシックであったり、自然のたまものによるものが多い。
・革への加工技術が進み、ゴムや鉱物など第三の素材が登場。
・光りの表現方法に大きな変化。水や空気も色として重要な役割を持つ。
・フェイクファーにみるように偽物が新たな地位を築く。
・エコへの限りない追求。
・LGPTやジェンダーレスの影響によるスタイリングの広がりに素材も対応。
・プリントモチーフの多様化。表現の多様化。例えば当たり前のチェックが当たり前でなくなる。動物登場。恐れや喜びなど心の描写。歴史やアーカイブは宝物。環境を描く。などなど花や幾何柄、アニメーションも心理学的なものや社会や文化に対応していく。
会場内で目にした様々なテーマやキーワードはこれらのポイントを押さえたもので構成され複雑に絡み合っているように思います。