武田 尚子

2021 03 Feb

女性が自信をもって生きていくために

「デジタル100%」のパリ国際ランジェリー展、「ランジェリーコネクト」が現在開かれている。
その場の雰囲気や世界観を感じることはできないし、実際に手にとって商品を見ることはできないし、プレスのガイド役となる展示会全体のリリースがあるわけではないし、時差があるから早寝の私にとってはつらいものがあるが、開幕1週間少しずつコネクトしながら見えてきたこともある。

今回、気になるのが「女性らしさ(femininity)」という言葉がたびたび聞かれることだ。ジェンダーフリー、あるいは新しいフェミニズムの時代ともいえる昨今だが、ランジェリーを本質的に掘り下げていくと、改めてこの問題に突き当たる。
近年、ダイバーシティ(多様性)を背景にした「あらゆる女性のために」というフレーズと共に、人種、体型、年齢を超えた提案が重視されているが、これをもう一歩推し進めたかたちで、あらゆる女性たちが自信をもってポジティブに生きていくということに目が向けられているのだ。
「女性らしさ(femininity)」と並び、この「自信(confidence)」も今回の大きなキーワードとなっている。

その象徴として、今回、注目されるのは、乳がん手術で乳房切除した女性に向けた新ブランドが登場していることだ。シリコンパッドが入れられるブラジャーはこれまでもいくつかあったが、今回は従来とは違う切り口から女性としての自信を取り戻すアイテムが提案されている。
例えば「エクラ・ド・フローレ」(フランス)は、家でくつろぐフェミニンでやさしいナイトウエアのブランドだ。
また、「ブレストフラワー」(オランダ)は、そのブランド名の通り、バストにつける花のコサージュ(アクセサリーでもあり、ブラパッドにもなる)といえるもの。乳がん手術を体験したカムロエン・ファルザンさんによる起業で、本人自らブランドの顔としてこの新しいアイテムの浸透を図っている。

日本では、このコロナ禍で多くの女性が自殺したことがニュースになっているが、今、女性たちがどんな困難な中でもポジティブに生きていくための社会の連帯が求められている。ランジェリーはそういう役割も担っているのではないかと思う。