武田 尚子

2020 17 Jun

引き続きEC好調のワコール

徐々に以前の経済活動を取り戻そうという動きになっているが、アパレル業界はまだまだ厳しいものがある。その中でも、活発な動きをしているのがEC。

店頭が閉まっていた、感染防止の外出控えという理由だけではなく、買いものの仕方そのものが今回のコロナ禍を契機に大きく変化しているというあらわれともいえる。

インナーアパレル大手、ワコールから、引き続きオンラインでの受注が増加していることが報告されている。
2020年5月の同社ウェブストアの売上実績は、前年比206%(速報値)。前月の176%よりもさらに伸びている。

特に好調なのは、直営店ブランドの「アンフィ」や「ウンナナクール」で、共に昨年の3倍以上の売上になっている(4月は昨年の2倍と報告されていたので、さらに上昇)。ワコールウェブストアとの会員情報の連携ができているので、アプリでのコミュニケーションも奏功しているという。

「アンフィ」のけん引役となっているのは、店頭で実績のある谷間メイク機能を備えた「グラマリッチブラ」。新商品を5月1日からウエブストアで先行販売したところ、5月月間におけるワコールウェブストアで最も売れた商品となった。価格は3900円~(+税)。

その他、パジャマやルームウエア(前年の3倍以上)、寝る時用のブラジャー(複数ブランド全体で5倍以上)、またノンワイヤーブラジャーについても、「ゴコチ」や「ブラジェニック」が約3倍と引き続き好調を続けている。下写真はその一例。

「睡眠科学 ふわごころ パジャマ」(ワコール)15,000円~(+税)


「GOCOCiハーフトップ」(ワコール) 3500円~(+税)

それ以外で注目されるのが、マタニティ。必要に迫っているけれど、外出自粛と感染予防のために店舗に行けないお客様が、ウェブストアで購入する傾向が目立っている。
2月から受注が増え始め、3月は前年の1・5倍、4月は3倍、そして5月は3・5倍となっている。

下写真は、昨秋に開催されたワコール2020春夏展示会でのマタニティ(ワコールファミリーウエア事業部)商品群。

ちなみに、同社の自社EC比率は5%(2020年3月期実績)と決して高くないが、このシェアが変化することは間違いない。今後の課題は、もともとの強みである店頭販売の挽回とECとの相乗効果であろう。ここ数年進めてきたオムニチャネル戦略の出番である。