武田 尚子

2024 18 Feb

リネンで環境とつながる

地球環境問題に端を発した「持続可能性(サスティナビリティ)」が、ランジェリー産業においても近年の大きなテーマになっているが、1月の「2024パリ国際ランジェリー展」では、それをことさら声高に唱える段階は過ぎたことを感じた。
もちろん循環型社会を目指す中で、生物由来の新しい素材開発は続けられ、再生繊維やリサイクル素材は既に当たり前のものとして使用され定着している。

そういった中で改めて見直されているのが天然繊維で、シルクやコットンの人気の根強さがうかがえた。
特に、今回の注目素材といえるのは、亜麻を原料にしたリネン。独立系新進ブランドが集結した「EXPOSED」エリアに初出展した「TA-CT(タクト)」(ベルギー)は、リネン(麻)のニットにポテンシャルの高さを痛感し、2022年夏にブランドをスタートさせている。

まず、リネンという素材がヨーロッパのモードの歴史の一部であることを発見。
20世紀初頭に綿が追い越すまで、リネンがメイン素材であったことは、パリで開催される展覧会などを観るとよくわかる。
特にフランドル地方は高品質な亜麻の生産地として知られているが、今も亜麻の栽培から紡績、生地製造に至るまで、すべての生産工程がヨーロッパ内でできるという。亜麻は輪作可能で、灌漑も肥料も不要、廃棄物もゼロという、環境に優しい素材となっている。
また、リネンニットは、通気性、体温調節、非アレルギー性、抗菌性など、インナーウエアに最適の機能性を備えている。
同ブランドの素材はマスターオブリネンの認証を持ち、染色工程はオーガニックのGOTS認証を取得、製品開発に関してはすべて自社で行っているという。

デザイナーのRenaud Lampaert(ルノー・ランパート)さんは、卓越したカッティング技術で独自のシルエットをつくるベルギーのデザイナーブランド「Sofie D`hoore(ソフィー・ドール)」で長く仕事をした後、ボンマルシェにも売場コーナーのあるクチュールランジェリーの「Carine Gilson(カリーヌ・ギルソン)」でパタンナーをしていたキャリアの持ち主。レディス、メンズともに、シンプルでミニマルなスタイルで、肌にやさしくフィットするインナーウエアを展開している。オーガニックカラーの色合いも魅力だ。

「あまり”サスティナブル“を強調することはしたくありませんが、マーケティングの意味ではなく、空気、水、光など周囲の自然と自分の体がつながっている感覚を持って、品質の高いものを身に着けたいという願いを込めています」
ルノーさん(写真右)はこう語っている。