武田 尚子

2020 17 Feb

オートクチュールから受ける美の刺激

より現実的、合理的な傾向を強めているランジェリーだが、クラフトマンシップ、いやフランスだけにオートクチュールといった方が似つかわしいが、そういう職人芸やデザイナーのクリエーションという、服飾の原点にあるものを我々に呼び起させてくれたのが、今回の素材展・アンテルフィリエールの「The Exception」(2013年から1月展で毎年開催されている特別展)だ。

ダイバーシティもサスティナブルももちろん社会的役割として重要だが、やはりランジェリーは美しくなくてはという、美への渇望がこのスペースに凝縮、象徴されていたように感じる。 

今回のテーマは“ウエディングスピリット”。といってもここに展示されていたのはウエディングをテーマにしたランジェリーやランジェリー素材というのではなく、オートクチュールのブライダルの世界。様々な素材を使った現代のアーティストたちによる作品が集められ、そこからランジェリーの創作に多くのインスピレーションが投げかけられていた。

もともとオートクチュールとランジェリーには共通点が少なくなく、アンテルフィリエールには古くからオートクチュール関係者が来場することでも知られている。 

同展の企画・監修に当たったのは、ブライダル業界のデザイナーとして経験を積んできたPatricia Remy(パトリシア・レミ)。彼女のネットワークであるアーティストやアトリエの協力を得て、今回の夢のような空間が出来上がった。

 

蚤の市で見つけたヴィンテージをベースに、ヴィクトリアン風ヴィンテージを表現したアクセサリー(Pascal PALUN 

庭園をイメージしたフラワーアレジメント(Miyoko YASUMOTO)

 ドライフラワーを使った刺しゅうの作品(Olga PRINKU) 

海をイメージしたクチュールドレスは、シリコン素材で出来ている(素材はTzuri GUETA、ドレスデザインはLita WEIZMAN) 

アロエやバナナなどのベジタルファイバーや金属糸を使った手織り(Aurelia LEBLANC)

 

いずれも贅沢に時間をかけ、卓越した感性と手技の妙を感じさせるものばかり。

過去の遺産をベースにしながら、常に今の時代のフィルターを通した新しいもの、しかも非常に美しいものを生み出す、フランスの底力を痛感した特別展であった。