武田 尚子
ランジェリー新ブランドの凛とした佇まい
ランジェリーの新しいブランド、新しいデザイナーに会えるということは、大いなる希望である。ことに、日本からフレッシュなブランドが登場するのはうれしい。
3月下旬に開かれた合同展プラグインのランジェリーエリア〈ランジェリスト〉で、モノトーンの世界で凛とした佇まいを見せていたのは、「someica(そめいか)」。デザイナーの三好亜美さんと、ディレクターの宮脇昂平さん、神戸芸術工科大学を卒業した若い2人によるもので、ブランドデビューからちょうど1周年になる。
ブランド名「someica」は、フランス語の「sommet(頂上)」と「ecart(差、隔たり、隙間)」を合成したもので、服と体の間にあるランジェリーの美しさを追求したいという思いを込めている。
もともと自分の体にコンプレックスがあったというデザイナーの三好さんが、ランジェリーに目覚めたのはどういうきっかけがあったのだろう。岸和田出身の三好さんは、高校時代の制服がコシノジュンコによるデザインという環境で育った。ファッションデザインやパターンを勉強していた大学時代に、エスモードから来ていた講師にランジェリーの講義を受けたこと、さらにトリンプ・インターナショナル・ジャパンを舞台にしたネットフリックスのドラマに、こういう世界もあるのだと気づかされたことも要因にあげられる。
ブランドのコンセプトにしているのは、「自分のコンプレックスさえも愛おしく感じるような自己陶酔ランジェリー」としている。自己陶酔こそ、ファッションの原点に違いない。
ランジェリーならではの構築性やはかなさをベースにしながら、大好きなアーティスト、パティ・スミスの女性像を盛り込んでおり、黒を基本とする色やシャープなカッティング、さらにメタリックなボディピアスをパーツに使ったり、ひも使いを特徴にしたりと、静かな中にもパンクのエッセンスを秘めている。
「ランジェリーのマニアだけではなく、世界のファッション好きの人たちに選んでもらうようなランジェリーブランドになりたい」というのが2人の願いだ。
アイテム構成はブラジャーとショーツをはじめ、ボディスーツやビスチェなどだが、ディテールの凝ったものが多く、現在はすべて自分たち自身で縫製を行っている。次シーズンからは服(アウターウエア)として着られるものも増やしていきたいとしている。好感のもてる2人の人柄とともに、今後の成長が気になるブランドだ。