武田 尚子

2020 31 Jan

「マリー・クワント展」での発見

ロンドンのV&A(ヴィクトリア&アルバート博物館)で開かれている「マリー・クワント展」を観に行った。

昨年、1960年代のスウィンギング・ロンドンを扱ったドキュメンタリー映画「マイジェネレーション」が印象深かっただけに、今回のパリ出張の際にぜひ足を延ばしたいと思っていたのだ。

 

あのデイジーロゴと共に、日本でもコスメを中心にすっかりおなじみの同ブランドだが、もともとミニスカートの発明者であることもよく知られている(「ミニ」が英国車の「ミニ」からとったことは知らなかった)。

展覧会会場は2層構成で、1955年に最初の店をロンドンチェルシー地区のキングスロードに開いたスタートから、世界にビジネスを拡大して大成功をおさめるところまで、ブランドの全体像が眺められるようになっている。

ファッションの一つの革命の象徴ともいえるミニスカート。同時代にフランスのアンドレ・クレージュなどもすぐ思い浮かばれるが、クレージュが近未来的デザインを特徴にしているのに対し、マリー・クワントは(こういっては何だが)もう少し土臭いというか、ベーシックというか、イギリスらしく色も茶系、レンガ系が多かったことも発見であった(ちなみにクレージュやカルダンより、マリー・クワントは10歳若く、85歳でご存命)。

 

発見はいろいろあったが、特に足がとまったのは、1960年代半ばに発表したランジェリー(アンダーウエア)であった。

靴下止めつきの筒型ガードルは50年代の名残の時代性を感じさせるが、デイジーロゴがついているところが、ひねりが効いていてポップな雰囲気。

既に透けるソフトな三角ブラ&ショーツのペアは、1970年代のノーブラムーブメントあるいはセカンドスキンの先取りといえる。「surgical(外科的)ではなくbirthday suits(生まれたままの)」というコメントに、同時代に日本で活躍した鴨居羊子との共通点を感じた。

このランジェリーから、あのカラータイツに発展していったことは容易に想像できる。後には、靴下編み機で作ったニット地のランジェリーも。

また、ラウンジウエアやホームウエア、ニットウエアなどでもおもしろいものが目についた。

 

マリー・クワントらしいアイテムといえるのが、PVC(コットンのプラスチックコーティング)のカラフルなレインコート。1960年代前半に最初に発表されている。

 

ミニスカートとコーディネイトする必須アイテムとしてカラフルなタイツやストッキング、そしてレインブーツがマリー・クワントらしい。

 

一部の特権階級のものだったファッションが、大衆のもの、特に若者が主役になっていく時代で、大きな役割を果たしたマリー・クワント。ファッションシステムやマーケティングも含めて、今日の原型がこの時代の変革にあり、脈々と現代につながっていることを肌で感じた展覧会であった。