武田 尚子

2024 06 Sep

「ワコール」リブランディングのイベント

久しぶりにワコールが記者発表会を行うというので、都心に足を運んだ。場所は、東京ミッドタウン日比谷のアトリウム。9月6日から3日間、ここでブランドの世界観を体現した「Love your moment Garden」を展開する。

このイベントの背景にあるのは、「ワコール」ブランドのリブランディングだ。
「美しさ」をつくるブランドから、「新しい自分、可能性」との出会いをつくるブランドへ生まれ変わるという。ニュースリリースには以下の言葉が続く。

新たなブランドメッセージは、「愛するわたしへ。Love your moment.」。一日の始まりに下着を選ぶ時間が、自分の気持ちやかけがえのない瞬間に替わるよう、お客さま一人ひとりに「自分を見つめ、自分を愛せる瞬間」を提供していきます。株式会社ワコールを代表する基幹ブランドとして、下着の価値向上を図ります。

自分と向き合い、「自分を愛せる瞬間」のきっかけとして“香り”に注目。フラワーショップ「fete(フェテ)」とのコラボによって今回のハーブガーデンを作り、オリジナルのサシェ作り体験を提案したというわけである。
ただ、この「記者発表」は実質ゲスト3人のトークイベントであり、それに続く「プレス内覧会」も商品の紹介ではなくサシェ作り体験であったことに、隔世の感?をいただいたのは私だけではないだろう。

これまでのメーカー視点から、お客様視点への転換という姿勢はよく理解できる。「ワコール」ブランドは今後、単品訴求の宣伝はおそらくやらないだろうとしているが、このような抽象的なブランド像を消費者に広く伝えていくのはなかなか難しいだろうなと感じる。少なくとも、まず情報を媒介するメディア(一般のウェブ媒体も含めて)の人間に感動や新しさを感じさせなければ、消費者に感動を伝えることはできないのではないだろうか。

長年、業界を見ている立場としては、やはり「新生ワコール」はそれを象徴する画期的な商品で表現してほしかったという思いもある。
戦後日本において、「下着」の価値や概念を大きく変え、常に新しい言語(コンセプト)で時代の先端を歩んできた企業らしく、これまで蓄積された伝統や技術の上にたって、未来も常に時代の先端を切り拓いていく企業(ブランド)であってほしいと願ってやまない。

ゲストは左から菅井友香さん、志田未来さん、阿部詩さん