武田 尚子

2021 08 Oct

サステナブルな天然素材が次々登場

世界のファッション業界は“サステナブル”の大合唱が続いている。数テンポ遅れながら、今や日本でも“SDGs”の呼び声と共に、“サステナブル”は一大トレンドとなっている。5年以上前から(“エコロジー”は10年以上前からか)このキーワードをいやというほど聞いている身にとっては、正直言ってもうあまり聞きたくないし、使いたくないのだが、多くの矛盾をはらみながらも、このトレンドによって、人々の意識が変化し、地球環境問題が少しでも改善されるなら、それはそれで悪いことではない。

再生繊維やリサイクル素材、オーガニックコットンに限らず、最近はサステナブルな素材の種類が実に多様化し、天然素材においても新顔が登場している。

イタリア・コモのシルクを使ったラグジュアリーなナイトウエアブランド、「Morpho+Luna(モルフォプラスルナ)」(本社はイギリス・ロンドン)は、2021‐22年の新しいコレクション”ダンシングバタフライ“に、ResilkⓇというマンテロ社の特許素材を使っている。これはシルク生地の生産過程で出る端切れを再生して作ったもので、シルクよりしっかりした厚みがあり、カシミヤのようなあたたかな肌触りが味わえるという。またこのコレクションはマンテロ社の膨大なアーカイブ資料からインスピレーションを得たもので、日本のアールデコの美意識がデザインに反映されている。

シルクの一方、ウールにおいても、このサステナブルな動きが目につく。
オーガニックコットンのアバンティが展開するオリジナルブランド「プリスティン」では、2021年秋冬から、使用するウール素材をノンミュージングの裏付けのあるものに移行すると発表した(「サステナブル」というより「エシカル」というほうが適切だろう)。

ウールは一般に、羊への蛆虫の寄生を防ぐために、子羊のうちに臀部の皮膚や肉体の一部を切り落として育成する、ミュールジングという方法がとられているが、近年は動物愛護の観点から問題視されていた。これに対してノンミュールジングとは、羊に痛みを伴うミュールジングを行わず、自然のままのやさしい飼育方法で得られるウールのことを指す。
安全性、信頼性の観点から、「だれが、どこで、どのようにして」作られたかという、トレーサビリティが明確な物作りでより幸せな未来を目指す、同社らしい取り組みといえる。

いずれにしても、この「サステナブル」、一過性のトレンドに終わるものではないことは言うまでもない。